石破内閣の支持率があがらない。
【データを見る】JNN世論調査解説 自民“裏金”決着急ぐも終わらぬ「政治とカネ」 支持率伸び悩み“選挙イヤー”も暗雲
最新のJNN世論調査で、石破内閣の支持率は前回調査から0.7ポイント下落して41.4%だった。先の臨時国会では補正予算を成立させるため、野党側の要求を次々と飲んで修正した。そうした自民党の対応についておよそ6割が評価したが、支持率には反映されなかった。
今年の夏には都議選、参議院選挙が控える「選挙イヤー」となる中、果たして石破総理で乗り切れるのか。
残された「103万円の壁」問題 議論大詰めへ
1月24日に通常国会が召集される。まず結論を出さないといけないのは、前の国会から取り残しとなっている「年収103万円の壁」の見直しと「企業・団体献金」の扱いについてだ。自民・公明・国民民主で議論を続けてきた所得税の非課税枠「103万円の壁」について、政府・与党は、25年税制改正大綱で“一旦”123万円に引き上げることを決めた。しかし衆院選から引き上げを求めてきた国民民主党は、引き続き178万円までの引き上げを主張している。一方、国民民主党の主張通り引き上げた場合、国と地方であわせて7.6兆円税収が不足することから、自治体からは根強い反対の声があがっている。
こうした声を踏まえ、いくらまで引き上げるのが望ましいのか。世論調査で聞いたところ、一番多かったのは「150万円程度まで引き上げるべき」で33%だった。次いで「178万円まで」が31%、「123万円のままで良い」が20%と続く。
自民、公明、国民民主は3党間で「2025年から引き上げる」ことで合意しているため、その財源の裏付けとなる25年度予算案にむけて、どの程度まで引き上げるのか、それとも123万で据え置くのか、そうした議論が大詰めを迎える。
さっそく自民党・森山幹事長は1月8日、熊本市での講演で「財源の裏付けのない話をしてはいけない。そういう政治をすると国をおかしくする」と国民民主党をけん制する発言をしたが、支持率が自民党に次ぐ第2位となり、世論に後押しされた国民民主と妥協点を探っていかざるを得ないだろう。
「企業・団体献金」の行方は?聞き方を変えると意外な結果に
次に議論が先送りされている課題がある。裏金問題を端緒とした政治資金規正法の再改正をめぐり「企業・団体献金」の扱いをどうするか。主要野党は「政策が歪められる」ことを理由に禁止を求めているが、自民党は一貫して「禁止よりも公開」を主張している。ただ立憲民主党の案には「政治団体を除く」と明記されていて、立憲などの支持母体である「労働組合系の政治団体」からの献金は可能なことから、自民党だけではなく他の野党からも「抜け穴だ」と指摘を受けるなど、野党側も一枚岩ではない。
先の臨時国会ではこうしたすったもんだの議論が続き、結論は年度内に先送りされた。この企業・団体献金について、規正法再改正の議論が最中だった12月のJNN世論調査では「禁止を法案に盛りこむべきかどうか」の2択で聞いたところ、「盛りこむべき」は64%、「盛りこむ必要はない」が25%という結果だった。つまり企業・団体献金は「禁止すべき」という声が6割を超えたことになる。
ところが今回の調査で、自民党が主張する「禁止する必要はないが透明性を高めるべき」という選択肢を加え3択形式にしたところ、「禁止すべき」は22%、「禁止する必要はないが透明性を高めるべき」は65%にのぼった。
こうした結果に自民党関係者の中からは「意外だった」と驚きとともに、今後の交渉への期待感も広がるが、立憲代表の野田代表は「ここで自分たちの主張が通るかどうか一つの試金石だ」と意気込む。
終わらない「政治とカネ」 8億寄付でも「けじめにならない」85%
一方、夏の都議選、参院選まで「政治とカネ」の問題を引きずりたくない自民党は昨年末、問題の決着を急いだ。
これまで国会で説明をしていなかった安倍派・二階派の衆・参院議員が、公開で政治倫理審査会に出席し、弁明を行った。安倍派幹部だった萩生田光一元政調会長は、政倫審に公開で出席した理由について、裏金問題を「党内的には終わりにする」という条件を党執行部が了承したからだと明かしている。
自民・萩生田光一元政調会長
「この問題は党内的にはもう終わりにするってことを前提に15人は出ましょうと。落選してしまった人たちが政倫審で弁明してないから公認しないといった不利益を今後ないようにしてくれと約束をして、それを執行部が理解したんで、我々揃って出て説明をした」(8日・インターネット番組「ニッポンジャーナル」で)
衆院選で党からの公認を得られなかった萩生田氏、そして二階派元幹部だった平沢勝栄衆院議員はこの政倫審出席後に党の公認の前提となる、支部長に正式に選任された。
さらに、自民党は「党の政治的けじめ」として不記載相当額7億2000万円に“おわびのしるし”8000万円を上乗せし、計8億円を赤い羽根共同募金で知られる「中央共同募金」に寄付した。
年内に「政治とカネ」の決着に急いだ自民党だったが、これで「けじめになると思う」人は9%に過ぎず、85%の人が「けじめにならないと思う」と回答した。
東京・有楽町で有権者を取材しても懐疑的な声が多い。
●「何に使われているかわからない形だと納得しようもない」(20代女性)
●「募金で何か大まかに片付けちゃうようななんかあんまり気に入らないですよね。政治的決着を早くつけたいっていうふうにしか思わないですね」(80代男性)
●「どっかにそのお金を持っていかないとけじめがつかないから、一番やっぱり募金っていう形が一番収まりがいいんでしょうね」(60代女性)
●「小手先っていっちゃ悪いかもしれないけど皆さんが納得する形で(政治資金を)集める仕組みをどうしたらいいのかっていう話し合いを続けて欲しい」(40代女性)
今回の政倫審で「2003年にはノルマ超過分はキックバックがあった(萩生田氏)」ことや「2014年ごろに事務局から収支報告書に記載するなと要請があった」(柴山昌彦衆院議員)ことは明らかになったものの、不記載がはじまった時期や経緯、安倍会長死去後、復活した経緯など真相はわからぬままだった。
さらなる真相解明をはかるため、安倍派の元会計責任者を国会招致すべきかという質問には6割以上の人が「招致すべきだ」と答えている。
与党側はすでに裁判で立証が尽くされていることや、執行猶予中の人物であることを理由に参考人招致には反対したが、野党側は引き続き招致を求めている。立憲民主党の安住予算委員長も参考人招致は全会一致が原則であることから先の臨時国会では招致を見送ったが、「(通常)国会が始まった早い段階、早々この問題について決着をつけたい」としていて通常国会後、この問題は改めて再燃する見通しだ。
期待する政策は「物価高対策」年頭記者会見で総理から言及なし
通常国会では、25年度予算案や税制改正法のほか、とくに重要な法案として5年に1度の年金制度改革の関連法案やサイバー攻撃の被害を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の関連法案、生成AIに関する法案など、政府提出法案は59本にのぼる。そのほか、野党などは議員立法として選択的夫婦別姓制度を導入するための関連法案を提出予定だ。
こうした中で、通常国会でとくに重点的に取り組んで欲しい政策を1つ聞いたところ、一番多かったのは「物価高対策」だった。
一方で、石破総理が三重県・伊勢市での年頭記者会見で、一番の柱としてあげたのは看板政策の「地方創生」で、物価高対策についての言及はなかった。
言及があったのは、政治資金問題、賃上げ、社会保障、震災復興(防災)、外交・安全保障だった。
石破総理
「第1の柱として私は令和の日本列島改造と位置づけ『地方創生2.0』強力にを進めてまいります。強い日本、豊かな日本を進めた時代に、国策として進められたとも指摘される一極集中を見直し、多様性を未来の力に、そのようにしてまいります」(8日・年頭会見で)
2014年、第2次安倍内閣で初代地方創生担当大臣になった石破総理だったが、それから10年を経過しても東京一極集中は改善されていない。今回、25年度予算案に地方創生交付金として新たに2000億円以上を計上し、前年度から倍増させたが反省を生かせるか。バラマキだと批判されないためには、結果が求められる。
石破総理いつまで?最多は「夏の参院選挙まで」
今年は12年ぶりに東京都議会議員選挙と参院議員選挙が重なる「選挙イヤー」となる。過去、都議選に負けた後に参院選で勝利する例は少なく、少数与党となった自民党にとっては試練の夏となりそうだ。
年末には総理から「衆参同日選挙」や野党との「大連立」の可能性に触れる発言が目立った。総理周辺は「いまは全ての可能性を排除しないアドバルーン的な発言だ」と解説するが、現実的にはどちらも実現は困難だとの見方が強い。
支持率が伸び悩む中、参院選挙を石破総理で乗り切れるのかという不安を口にする永田町関係者は多いが、一方で事態を打開できる“ポスト石破”候補も不在で、参院選までは石破総理でやるしかないとの声も多くある。
世論も「石破総理にいつまで総理を続けて欲しいか」との質問で最も多い回答は「夏の参院選まで」で36%。そして「出来るだけ長く続けて欲しい」が22%と続いた。
参議院選挙で目標とする「与党で改選議席の過半数」(森山幹事長)を死守できるのか、24日に召集される通常国会での与党の対応に国民の目が注がれる。
TBS政治部 世論調査担当デスク 室井祐作
【1月JNN世論調査の結果概要】
●石破内閣の支持率は41.4%(前回調査より0.7ポイント下落)、不支持率は55.2%(前回調査より2.8ポイント上昇)
●政党支持率は、自民党26.2%(前回より2.0ポイント下落)、立憲民主党8.2%(前回より0.3ポイント下落)、日本維新の会2.5%(前回よりポイント1.5下落)、国民民主党11.0%(前回より2.2ポイント上昇)。
●臨時国会で野党の要求を受け入れ補正予算などを修正した自民党の対応について「非常に評価する」は6%、「ある程度評価する」は53%、「あまり評価しない」は30%、「全く評価しない」は7%
●年収「103万円の壁」をどの程度引き上げるかについて、「123万円のままで良い」が20%、「150万円程度まで」が33%、「178万円まで」が31%、「引き上げ自体に反対」は9%
●自民党が裏金問題のけじめとして8億円を寄付したことについて「けじめになると思う」は9%、「けじめにならないと思う」が85%
●安倍派の元会計責任者の国会への参考人招致について「招致すべき」が61%、「招致する必要はない」が29%
●議論が先送りされた企業・団体献金の扱いについて「禁止すべき」が22%、「禁止する必要はないが透明性を高めるべき」が65%、「現状のままで良い」が7%
●石破総理にいつまで総理を続けて欲しいかについては「出来るだけ長く」が22%、「25年予算が成立する春頃まで」が19%、「夏の参院選まで」が36%、「直ちに交代」が16%。
●通常国会で重点的に取り組んで欲しい政策については(※1つだけ回答)
「物価高対策」38.3%
「少子化対策や子育て支援」15.6%
「景気・雇用対策」11.1%
「社会保障対策」10.7%
「外交・安全保障」5.6%
「地方の活性化対策」3.0%
「政治とカネ」2.6%
「治安・防災対策」2.3%
「憲法改正」2.0%
「選択的夫婦別姓制度」1.0%
「それ以外」3.6%
【調査方法】
JNNではコンピュータで無作為に数字を組み合わせ、固定電話と携帯電話両方をかけて行う「RDD方式」を採用しています。
1月4日(土)、1月5日(日)に全国18歳以上の男女2719人〔固定903人、携帯1816人〕に調査を行い、そのうち37.4%にあたる1018人から有効な回答を得ました。その内訳は固定電話499人、携帯519人でした。
インターネットによる調査は、「その分野に関心がある人」が多く回答する傾向があるため、調査結果には偏りが生じます。
より「有権者の縮図」に近づけるためにもJNNでは電話による調査を実施しています。無作為に選んだ方々に対し、機械による自動音声で調査を行うのではなく、調査員が直接聞き取りを行っています。固定電話も年齢層が偏らないよう、お住まいの方から乱数で指定させて頂いたお一人を選んで、質問させて頂いています。