猫がしている『人助け』5選 病院、高齢者施設、学校…心の支えになってくれている猫たち

2025-06-12 06:00

アニマルセラピーという言葉をご存知でしょうか。動物を介在させて人を治療するもので、紀元前400年のギリシアで、負傷した兵士を乗馬で治療したことが始まりだと言われています。日本でも、人と伴侶動物とのふれあいを通してさまざまな活動が行われ、その現場では多くの猫たちが活躍しています。今回は、アニマルセラピーをはじめとした、人と動物のふれあい活動を通して猫がしている人助けをご紹介します。

ふれあうことで人を助ける動物たち

猫を抱く少年

アニマルセラピーとして有名なのは、ホースセラピー(乗馬療法)やイルカセラピー(アクアセラピー)でしょう。いずれも、身体機能の回復や、精神的な治療などに適用されてきました。

現在では、人と動物とのふれあいを通してさらに幅広い活動が展開され、しかもその現場では身近な伴侶動物たちが活躍しています。

現在日本で行われている人と動物とのふれあい活動は、大きく下記の3つに分類されます。

1.動物介在活動(Animal Assisted Activities;AAA)

動物とのふれあいを通して、情緒的な安定や生活の質(QOL)の向上、レクリエーション効果などを高める活動で、一般的に「アニマルセラピー」と呼ばれる活動の多くが、この分類に属します。

2.動物介在療法(Animal Assisted Therapy;AAT)

動物たちを人の医療現場や介護現場に連れて行き、医療従事者主導の下、精神的身体的機能や社会的機能の向上を目的とした治療を行う補助療法活動です。

3.動物介在教育(Assisted Education;AAE)

動物たちを教育現場に連れて行き、子どもに動物との接し方や命の大切さを学んでもらうための活動です。

活動に適しているのはどんな猫?

目を細めて抱かれる猫

日本全国の動物病院が会員となり、人と動物が同じように健康で幸せに生きていける社会の実現を目指して活動している、公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)という団体が、その活動の一環として、CAPP活動(アニマルセラピー人と動物のふれあい活動)を推進しています。

この活動では、会員である動物病院と一般の飼い主さんが、ボランティアとして高齢者施設や病院、学校などを訪問しています。1986年5月から2024年3月末日現在までに参加した動物の延べ頭数は、犬が129,433頭、猫が24,323頭、その他の動物が7,860頭になっているそうです。

参加しているのは、ごく普通の飼い主さんと、飼い犬や飼い猫たちです。ホームページに掲載されている犬・猫用の「適性セルフチェック」によると、下記の条件を満たしている猫であれば、適性がかなり高いと認められるようです。

  • 人間大好き!人見知りしない
  • 他の動物たちとも仲良くできる(こわがったり、攻撃したりしない)
  • 見慣れないものや、大きな音なども大丈夫
  • 健康管理はバッチリ(定期健診、予防)
  • 満1歳以上

猫がしている人助け

老婦人に抱かれる猫

JAHAのCAPP活動に限らず、人と動物がふれあいうさまざまな活動の現場で、猫が行っている人助けの内容についてご紹介します。

1.高齢者のケア

特別養護老人ホームなどでの入居期間が長くなると、生活が単調になりがちです。そのため、積極的に体を動かしたり、他の入居者とのコミュニケーションを取ろうとする意欲が低下し、身体機能の低下や不安定な精神状態につながることもあります。

介護施設に訪問した猫たちは、入居者に抱かれたり、すぐ近くで静かに寄り添ったりすることで、自然と手を動かさせたり、話しかけさせたり、入居者同士の会話を促したりする役に立っています。またこれらは、脳の活性化や情緒の安定にもつながっています。

2.入院患者のケア

病院やホスピスに長期間入院している患者さんに対しても、猫たちは役に立っています。静かに寄り添ったり抱かれたりすることで、患者さんの愛情ホルモン(幸せホルモン)の分泌を促し、ストレスや不安の軽減に貢献したり、入院生活における数少ない楽しい時間を提供したりしています。

3.障害者のケア

障害者施設を訪問した猫たちは、自閉症、ダウン症、脳性麻痺、知的発達障害などの障害を持つ方たちにも貢献しています。猫は、犬のように活発に活動したり、積極的に人とコミュニケーションを取ろうとしたり、大きな声で吠えたりすることもなく、ゆったりしたマイペースな動作で威圧感を与えないことが、良い効果を生み出していると考えられています。

4.学校教育

小学校などに訪問し、子どもたちに動物との正しいふれあいの仕方や命の大切さなどを教える場でも、猫たちは役に立っています。子どもたちに、相手に対する思いやりや責任感などを芽生えさせることに貢献しています。

5.小学生による猫への読み聞かせ

シアトルの動物保護団体では、2014年から子どもたちによる猫への読み聞かせプログラムを開始しました。犬に対して子どもたちが読み聞かせをする活動は、世界各地で行われていますが、猫に対する読み聞かせは、まだ稀なケースです。

この活動により、子どもの読書力が向上し、保護猫たちの社会化も進むという、大きな成果が上がっているそうです。

まとめ

泣きながら猫を抱く女性

実際に遭難者を救助したり、密輸品を見つけたりといった活動で人の役に立っている犬と比べると、猫の人助けはあまり華やかには見えないかもしれません。しかし、猫はその存在自体が人助けになっているようです。

そう考えると、今まであまり意識していませんでしたが、一緒に暮らしている猫たちは私たち飼い主の身体機能や情緒の安定を助けてくれているのかもしれません。そう考えれば、深夜に突然運動会を始めたり、朝叩き起こされたりする程度のことは、笑って許せそうに思えてくるのではないでしょうか。

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