約50年前に突如現れたソ連の“空飛ぶ軍事機密” 「ゲリラを殲滅せよ」当時の陸上自衛隊中隊長が受けた“違法な口頭命令”とは【報道の日2025】

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2025-12-26 07:09
約50年前に突如現れたソ連の“空飛ぶ軍事機密” 「ゲリラを殲滅せよ」当時の陸上自衛隊中隊長が受けた“違法な口頭命令”とは【報道の日2025】

1976年9月6日午後1時40分ごろ、北海道函館の上空に、ソ連の戦闘機「ミグ25」が突如として飛来しました。機体はほどなく函館空港に強行着陸します。

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操縦していたのはソ連防空軍のビクトル・ベレンコ中尉。目的はアメリカへの亡命でした。

米ソ冷戦の緊張下で、“空飛ぶ軍事機密”である最新鋭戦闘機が日本に降り立ったこの出来事。低空で侵入されれば、発見や追跡が難しくなるという、防衛システムの課題も突きつけられました。

そして、機体が降り立った函館では、その後緊張が高まり、ある“危うい局面”へと向かっていきます。

TBSテレビ「報道の日2025」は当時、陸上自衛隊・函館駐屯地の第3中隊に所属していた、元第3中隊長の大北太一郎さん、山鹿豊さん、飯嶋隆さんの3人に取材しました。
(TBS「報道の日2025」ディレクター 成田颯)

「日の丸じゃなかった」突然の飛来にざわついた駐屯地

強行着陸の直前、空の異変は函館駐屯地でもすぐに感じ取られていました。山鹿さんは当時の状況をこう振り返ります。

函館駐屯地 元陸上自衛隊 第3中隊 山鹿豊さん
「宿舎にいたとき、バリバリという大きい音がして空を見上げたら、見知らぬ戦闘機が飛んでいたんです。機体の後ろを見たら、日の丸ではありませんでした」

一方、当時中隊長だった大北さんは、混乱の中で機体を“見誤った”と話します。

函館駐屯地 元陸上自衛隊 第3中隊長 大北太一郎さん
「函館の上空を3回くらい旋回していたんです。まさかソ連の戦闘機が来るなんて思っていなかったので、後輩隊員に『あれが新しく航空自衛隊に入ったT2改という戦闘機だ』と説明していたんです。中隊長として恥をかいたんです(笑)」

2日後、届いた極秘情報「ソ連軍ゲリラが侵入する動き」

強行着陸の翌日、ソ連から日本側にある要求が届いた一方、2日後の9月8日には、アメリカ政府を通じて日本に極秘情報が届いたとされます。

“ミグ25を奪還・破壊するため、ソ連軍ゲリラが函館に侵入する動きがある”

情報は「信頼できる事実」と評価され、陸上自衛隊を統括する陸上幕僚監部などを通じて、函館駐屯地の幹部にも伝えられました。中隊長だった大北さんの耳にも入り、続いて上官から告げられた“命令”に驚いたと語ります。

函館駐屯地 元陸上自衛隊 第3中隊長 大北太一郎さん
「『函館空港に侵入するソ連のゲリラ部隊を撃滅せよ』という命令を、口頭で受けました。ソ連が捨てておくはずはない。きっと函館に取り返しにくるだろうと思いました」

この日、陸上幕僚監部は一刻を争う事態と判断。函館駐屯地で、有事に備えた体制づくりを進めました。

駐屯地に戦車、高射機関砲…泊まり込みで“10分出動”へ

ソ連軍ゲリラ侵入への備えとして、函館駐屯地には戦車2両が集められ、空からの攻撃に備えた高射機関砲も新たに配備されました。

さらに、全隊員約700人に泊まり込みが命じられ、号令がかかれば10分以内に出動できる体制を取ったといいます。

当時23歳だった山鹿さんは、その緊迫感をこう語ります。

函館駐屯地 元陸上自衛隊 第3中隊 山鹿豊さん
「隊員服の上下にブーツの半長靴をはいて、いつでも出られるように準備していました。武器なども、いつでも出せるよう武器庫に入る順番も決めていました。列になってぶつからないようにして、1秒を競う訓練をやりました」

当時18歳だった飯嶋さんは、泊まり込みの生活を“意外な思い出”として覚えているといいます。

函館駐屯地 元陸上自衛隊 第3中隊 飯嶋隆さん
「ベッドを汚さないように新聞紙をひいて寝ていた記憶があります。隊員は全員、外出できない、帰れない。駐屯地に泊まり込むことになりました。上の人も下の人も関係なくまとまって食事をするのは、普段、演習以外ではないので…嬉しかったかなっていう思い出があります」

“法の手続きがないまま”口頭命令に揺れた大北中隊長

大北さんは現場で指揮を執る立場として戸惑いを抱えていたといいます。

本来、自衛隊が武器や戦闘の準備を進めるには、政府の正式な手続きが必要です。さらに武力行使の段階では、総理が文書でだす「防衛出動命令」が必要です。ところが当時、函館駐屯地には、そうした正式な政府命令が届いていない状況でした。

函館駐屯地 元陸上自衛隊 第3中隊長 大北太一郎さん
「自衛隊法に明らかに反している、違法な口頭命令なわけです。防衛出動の命令もなく戦闘を命じ、多くの隊員を死傷させて、隊員の家族にも自分の家族にも申し訳ない。自分は犯罪者か。なんという罪状だろう。しかし、何としても戦って守り抜かなければ陸自の存在意義がない。全員倒れても任務は完遂しなければ、と」

9月10日、大北中隊長が宿舎で檄「突進をする」

強行着陸から5日目の1976年9月10日。

「ソ連軍ゲリラはいつ、どこから来るのか」

確かな見通しがないまま、函館駐屯地は異常な緊張状態にありました。

そんな中 大北さんは、自身の迷いを打ち消すよう、そしていつ前線に出ても隊員が力を尽くせるよう、宿舎に隊員を集めて檄を飛ばしたといいます。

函館駐屯地 元陸上自衛隊 第3中隊長 大北太一郎さん
「ソ連ゲリラが来たら第3中隊は函館空港に向かって突進をする。これまでずっと汗水流して、不眠不休の訓練を続けてきたのはこの時のためにあるんだ!と伝えました」

隊員たちの「おお!」という掛け声が駐屯地に響いたといいます。

函館駐屯地 元陸上自衛隊 第3中隊長 大北太一郎さん
「全員が掛け声で応じてくれて、私も大変嬉しくて、感激の一瞬でした。それまでひそひそ声だった中隊内の会話が大きく快活になった。心強かった。」

飯嶋さんも、その時の気持ちをこう語ります。

函館駐屯地 元陸上自衛隊 第3中隊 飯嶋隆さん
「上の人たちと一緒に行動ができることが誇らしいと思ってました。(大北)中隊長がおっしゃることを、しっかりできるようにと」

山鹿さんも当時を振り返ります。

函館駐屯地 元陸上自衛隊 第3中隊 山鹿豊さん
「自衛隊に入った以上は国を守る。やるぞ!という気合でした。当時、中隊の団結は強かったと思います」

部隊の結束が固まった、その翌日。函館の空は、さらに危うい局面へ向かっていきます。

TBS系列で12月28日放送(午前9時54分~)『報道の日2025』では、このとき、日本の政治が抱えていた混乱、ソ連が日本に突きつけた要求。そして防衛庁内でどのような話が挙がったのかなどをさらに詳しくお伝えします。

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