原発事故15年 キノコ、ヤマメ、アユ、ヒラメ…放射能の生き物への影響は【報道特集】

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2026-03-28 06:30
原発事故15年 キノコ、ヤマメ、アユ、ヒラメ…放射能の生き物への影響は【報道特集】

福島第一原発の事故から15年。今も様々な生き物に残る放射能の影響についてです。山のキノコ、川や海の魚たちの放射線量はどうなっているのでしょうか。研究チームに密着取材しました。

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原発事故 帰れぬままの故郷

福島県浪江町。原発事故で大量の放射性物質が降り注いだ。今も町の面積の78%が人の住むことができない、帰還困難区域となったままだ。

その帰還困難区域にあった三瓶民雄さん(72)の家はすでに無い。今は物置だけが残っている。

三瓶民雄さん(72)
「ここにうちがあったけど、震災で10年以上放っておくと屋根も落ちちゃった」

田んぼは変わり果てている。

三瓶さん
「ここの下が田んぼだった。田んぼだった面影…わからないでしょ?」

三瓶さんが住んでいた浪江町南津島には、家が残っているところもある。

三瓶さん
「(ここの家は)東京に行っている」
「ここが氏神さま」

神社は三瓶さんの集落で、住民達のこころのよりどころになっていた。

三瓶さん
「神様のお祭りの時は必ず集まった。みんなで集まって一杯飲んでいくのが楽しかった」
「花見や男の人の集まりがあって、家で酒飲んでどんちゃん騒ぎして、神様を拝んでからね」

三瓶さんは今、福島市内で暮らしている。同居している母親は94歳になる。

三瓶さん
「災害になる前まではみんなと過ごしていた。帰りたいと思う気持ちはある」

2023年、国は新しい制度を作った。家が帰還困難区域となった住民の中で、希望する人は帰還できるようにする。2030年までに放射性物質を取り除く除染を進めるとしている。

三瓶さんも戻りたいと希望を出しているが、家の敷地も田畑も除染の予定は見えていない。

三瓶さん
「除染して『帰っていいです』と言われれば気持ちの整理もつくが、今の状態ではどうしようもない」

家の敷地や周辺の放射線量を調査

福島大学・環境放射能研究所の難波謙二所長。

福島大学 環境放射能研究所 難波謙二所長
「あの杉を研究対象にさせてもらっている」

原発事故で出た放射性物質の生き物への影響を調べている。

三瓶さんの実家の放射線量はどのくらいなのか、この日、難波教授が調査した。

家の敷地や周辺の線量は毎時2〜3マイクロシーベルトだった。帰還困難区域の基準値を下回っているが、決して低くはない。

難波教授
「2か月あれば(積算)1ミリシーベルトになる。年間1ミリという、普通の人が受けていい被ばく線量は超える。『低くする努力を国はしなきゃいけない』といえばその通り」

震災前は裏山から引いた水を飲んでいた。

三瓶さん
「(水は)山から来るんでだめでしょう。飲み水にはできないと思う」

国が作った帰還制度では、水が使えなくなった人には井戸を掘ってくれることになっている。

難波教授
「新たに掘れば地下水には(放射性物質は)入ってこない」

家のすぐそばでとれていた山菜について、難波教授は…

三瓶さん
「タラの芽とかゼンマイとか採っていた」

難波教授
「よく食べられました?」

三瓶さん
「食べていた」

難波教授
「次の春にでも測ってみましょうか。山菜関係は福島市でも大体出荷制限、タケノコでも出荷制限になっている。あまり低くない値が出ると思う」

数字で伝える放射能の影響

原発周辺の町では多くの住民が避難を余儀なくされたが、少しづつ避難指示が解除され、復興拠点を中心に新たな町作りが進められている。

難波教授ら福島大学の研究チームは自然環境の線量調査について、住民や自治体関係者などへの報告会を重ねてきた。

福島大学 環境放射能研究所 難波謙二所長
「林業や水産業やレクリエーション(行楽目的)の方々の関心に応えるような発表ができれば良いかと思っています」            

生き物への影響について、科学的裏付けをとった数字を示して、正確に知ってほしいという思いがある。

参加者の中には帰還希望者のサポートをしている人も。

帰還希望者をサポート 松永妃都美さん
「環境に対する不安が多くあるので、数字を元に話をしている。環境と健康影響は放射線に関しては切り離せない。大変、勉強になりました」

難波教授が向かったのは、南相馬市高倉の民有林。帰還困難区域に近いが、立ち入りは制限されていない。

地元のキノコ採り名人、高橋信百合区長の協力を得て、野生のキノコの線量を調べる。

南相馬・高倉区長 高橋信百合さん
「有名なキノコばっかり出る。シメジや松茸…」

原発事故で広がった放射性物質のうちセシウム137は、体内に入ると筋肉に集まりやすい。半減期が30年と長く、影響も長期化する。

野生のキノコ 15年後の線量は

2026年2月、難波教授はキノコの線量を報告するため高橋さんを訪ねた。帰還困難区域の近くでとったキノコの放射線量について、調査の結果を報告した。

難波教授
「カジメタケが500(ベクレル)。カラスダケは700と800。ブナシメジ4400」

ほとんどのキノコの線量が基準値の100ベクレル/㎏を超えていた。

難波教授
「狭い場所でも(線量が)変わる。土の濃度も変わる。場所によって放射能も違う。土の放射能が違う」

15年たっても、なぜキノコから高い線量が出るのだろうか?

難波教授
「キノコの菌糸は広く伸びている。仮説としては、だんだんセシウムは深いところに入っていくはず。元々菌糸が分布しているのが深く、そこにセシウムが到達してキノコも(放射線量が)高くなっているのでは」

昆虫も関係か 線量下がらぬワケ

川の魚への影響について調べているのは、同じ研究チームの和田敏裕教授らだ。

上流部が浪江町の帰還困難区域にある太田川。渓流魚のヤマメを電気ショックで捕獲する。ヤマメが食べているのは、川底の砂や水中の落ち葉の中に隠れている水生昆虫だ。

ーーこれは何の虫?
「カクツツトビケラ。葉っぱで巣を作って、ミノムシ状態で中に入っています」

トビケラの仲間やトンボの幼虫のヤゴなど、多くの水生昆虫がとれた。

ヤマメは陸上にいる昆虫も好んで食べる。陸生昆虫は夜間、特殊なランプに集まって来たところを捕まえる。

木の葉っぱや落ち葉も持ち帰り、放射線量を計る。ヤマメの線量は…

「955ベクレル、基準値の9~10倍」

ヤマメの平均は基準値の8倍の836ベクレル、最高で6400ベクレルの個体もあった。

実はヤマメの放射線量は原発事故の5.6年後から下がっていない。

2018年からの数値を見ると、落ち葉や水生昆虫の線量は年々下がっている。だがヤマメと陸生昆虫の線量は、下がっているとは言えない。

福島国際研究教育機構 石井弓美子主任研究員
「ヤマメは特に(線量が)下がらない。ヤマメが陸生昆虫を多く食べる。特に陸生昆虫との結びつきが強い魚で下がりづらいんだろうと」

オレンジ色の球がセシウム。仮説では、木や落ち葉などの線量は下がる一方で、落ち葉の下にある土の表面付近にセシウムが溜まっているのではないか。

その土壌付近に生息し、餌などからセシウムを取り込んだ陸生昆虫をヤマメが食べていることが線量の下がらない要因と考えられる。

福島大学環境放射能研究所 和田敏裕教授 
「例えばカマドウマというバッタなどは『非常に濃度が高くなる』。カマドウマは落ち葉や腐葉土の下にいたりする。そういう所にセシウム濃度が高い部分があって、それを介してカマドウマからヤマメへとセシウムが移行しているかもしれない」

一方、川の下流では魚の数値が改善されてきたところもある。

下流のアユ 漁解禁のきざしも

南相馬市を流れる新田川。管轄する漁協では鮎漁の再開に向け、2022年から鮎の稚魚の放流を続けている。多くの鮎で線量を測るためだ。

2025年までの4年間の調査では、全て基準値の100ベクレル/㎏を下回り、多くが30ベクレル以下だった。鮎漁は解禁も見えてきた。

新田川太田川漁協 片平智榮理事
「国の出荷制限が100ベクレル/kgだが、漁協では50ベクレル以下に設定。今は30ベクレル以下で留まっている」

2026年はさらに多くの稚鮎を放流する予定で、これから川を人が集まる場所にしたいという。

片平理事
「周りの環境を他の河川と比較してみて、試験的にも川に入って頂いて、釣った魚はモニタリングに協力してもらうとか、そういった取り組みをしながら、河川に人が寄りつくような方向性を考えています」

原発処理水放出 前後の変化は

海の調査をしているのは同じ研究チームの高田兵衛教授だ。

事故を起こした福島第一原発から2キロの浜で魚を釣っている。ヒラメやスズキなどの魚が調査の対象だ。

2023年8月、東京電力は原発の廃炉作業で出る処理水の海への放出を開始した。

処理水はセシウムなどを除去した後の取り除けない放射性物質トリチウムを含む。トリチウムは水素の一種で弱い放射線を出し、雨水や飲料水、人の体内にも存在する。

船で原発に近づいていく。

高田教授らは、処理水放出前の2021年からトリチウムの調査を続け、魚とその場所の海水を分析した。

その結果、放出前のヒラメの平均が0.075ベクレル、放出後は0.13(/kg)。

処理水の放出後トリチウムが上昇しているが、人体へ及ぼす影響はセシウムの700分の1とされ、セシウムの基準値と比べても非常に低い。

そして、放出前の海水が0.085ベクレル、放出後は0.17(/L)だった。

ヒラメと海水の濃度はほぼ同じで、トリチウムは魚の体内にほとんど蓄積しないことがわかった。

福島大学環境放射能研究所 高田兵衛教授
「トリチウムの場合はほとんど蓄積しない。水の濃度が下がればすぐ魚の濃度も下がる」

原発の廃炉作業が難航する中で、処理水の放出はいつ終わるか見通せない。

国や東電も調査をしているが、高田教授は風評被害を防ぐためにも、第三者がデータをとり続けることが重要だと話す。

高田教授
「処理水の放出量が少し増えてきている。それによる広がり方がどう違うのか、ちゃんと見ていかないといけない。30年、40年近く放出を続けるが、常に数値をみていって問題が無いか、安全性が担保できているレベルはしっかり見ていかなければならない」

鯉養殖 風評被害を乗り越えて

数値に向き合って原発事故の風評被害を乗り越えようとしている人がいる。郡山市内で鯉の養殖を続けてきた熊田純幸さん。

県南鯉養殖業組合 熊田純幸    組合長
「15年、闘いの中。結果的に福島のものが全くだめになって」

事故があった2011年以降、郡山市では養殖の鯉から基準値を超えるセシウムは一度も出ていない。それでも鯉の値段は元に戻らなかった。

食用の鯉の安全性にこだわってきた熊田さん。福島大学の難波教授や行政とともに調査を続けた。

かつて鯉の養殖に使われていた酒蓋池では除染をした。この池の周辺の線量が比較的高かったためだ。

その結果セシウム全体は大きく減ったが、池の底の泥の表面に予想以上の濃度のセシウムが残った。

福島大学 難波謙二環境放射能研究所長(2018年)
「除染で相当浅いところは全部なくなっているんじゃないかと期待したが、私たちとしては意外に残っているかと」

熊田組合長
「完全(な除染)なんていうわけにはいかないのか」

熊田さんは酒蓋池を食用の鯉の養殖には使わないことに決め、郊外にある線量が非常に低い池で鯉の養殖を続けてきた。

難波教授らとの調査で、汲み上げた地下水の中で鯉に泥を吐かせると、線量がさらに下がることがわかった。

郡山市の養殖鯉のモニタリングでは、2023年以降、セシウムは全く検出されていない。

熊田組合長
「福島の水はミネラルが豊富だから(鯉が)美味しい」

加工場では鯉を甘露煮やアライにして出荷している。

原発事故から15年、熊田さんは2026年に初めて加工した鯉の県外への出荷を再開した。
事故前のように、全国に販路を広げようと意気込んでいる。

熊田組合長
「うちがトップクラスで鯉を作っているが、いかに全国に加工した魚を売るか。安全性には自信がある。クリアしていると思う」
「半分あきらめてきた、もうだめだと思って。15年たったら結構、福島のもの抵抗なくなってきたのかなと」

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