イラン情勢で米国から圧力を受け欧州で“自衛”が加速…フランスの「一日兵役」の現場に密着【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-05-05 11:53

イランとの交渉が難航する中、アメリカのトランプ大統領が再びヨーロッパの姿勢を批判し、圧力を強めています。ヨーロッパでは、フランスが「一日兵役」と呼ぶ軍事訓練を強化するなど自衛の動きが加速しています。

【写真を見る】「さあ、中東で危機だ!」より実践的なフランスの“一日兵役”

トランプ氏「『プロジェクト・フリーダム』を開始する」 商船2隻が海峡を通過

トランプ大統領(3日のSNSより)
「『プロジェクト・フリーダム』を中東時間の月曜朝に開始する」

アメリカのトランプ大統領は、ホルムズ海峡で足止めされている船舶を安全に誘導し、海峡を通過させるための措置を始めると発表しました。

これを受けアメリカ中央軍は、「第一弾として、アメリカ船籍の2隻の商船がホルムズ海峡を無事に通過した」とSNSで明らかにしました。

一方、イランの軍事精鋭部隊・革命防衛隊に近い「ファルス通信」は4日、ホルムズ海峡を通航しようとしたアメリカ海軍のフリゲート艦がイランの警告を無視して航行し、ミサイル2発を受けて引き返したと報じました。

一方、アメリカ軍はこれを否定しています。

このホルムズ海峡をめぐっては、アメリカとヨーロッパとの間でも、亀裂が表面化しています。

トランプ氏は非協力的な姿勢の欧州を非難

イラン情勢をめぐり、「アメリカには明らかに戦略がない」とアメリカを非難したのはドイツのメルツ首相。

これに強く反発したトランプ氏はその後、ドイツに駐留するアメリカ軍を「5000人以上削減する」との考えを示しました。

さらに、スペインやイタリアに対しても、トランプ大統領は「イタリアは我々にとって何の助けにもなっていないし、スペインはひどい」と、イラン攻撃をめぐる非協力的な姿勢を非難。スペイン・イタリアに駐留する部隊の削減を検討する考えを明らかにしています。

安全保障環境が揺らぐ中、核保有国・フランスは3月に衝撃の発表をしました。

フランス マクロン大統領(3月)
「核弾頭の保有数を増やすよう指示した」

冷戦以降、ほぼ半減させていた「核弾頭」を増強する、としたのです。ヨーロッパの核抑止力を高める狙いがあります。

フランスが強化「一日兵役」 欧州で“自衛”の動き相次ぐ

ウクライナ侵略を続けるロシアの脅威に加え、トランプ氏に対する不信感から、「自衛」の方向へ舵を切るヨーロッパ諸国。

フランスでは約30年前に徴兵制を廃止した代わりに、「一日兵役」と呼ばれる、1日だけ軍隊で教育を受ける義務を国民(16~25歳)に課しています。

これまでは、軍事関係の映像を見てアンケートに答える形式的なものでしたが、2025年9月からより“実戦的な内容”に刷新されました。

教官
「さあ、中東で危機だ!人質事件も発生していますからね」

中東で発生した紛争からフランス人を救出する事態を想定。教官が指令を出し、参加者は戦術を考えます。機関銃など装備品の使い方も、軍人から学びます。

女性参加者(17)
「武器を見て怖いというか、とても現実的に感じました。考えたことはなかったのですが、軍関係に進むのもアリかもしれません」

「軍の一日教育」責任者ソフィー・ペローさん
「『一日教育』が刷新されて、より軍事的かつダイナミックで、若者が実際に楽しめるものになりました」

一方、参加者からはこんな声も…

男性参加者(18)
「免許など資格を取るのに必要だから参加しました」

若者たちは「参加した」という証明書がないと運転免許証が取得できず、就職先も制限されるといいます。

ドイツでは2025年末、兵士が足りない場合に議会の承認を経て、徴兵制の復活を可能にする法案が可決されるなど、自国防衛の動きがヨーロッパで相次いでいます。

米軍縮小は「既定路線」 “日本も他人事ではない”

専門家は、「ヨーロッパに駐留するアメリカ軍の縮小は規定路線だ」としたうえで…

慶應義塾大学 鶴岡路人教授
「中長期的にアメリカがどの部隊をいつ撤退させるのか分かると、ヨーロッパ側もその能力を肩代わりする準備ができる。(ドイツ駐留米軍の5000人以上削減は)トランプ大統領がNATO諸国と調整をほとんどしたように見えない。このプロセスをいかに安定的に、抑止防衛体制に穴を開けない形で進められるかがNATO最大の課題になる」

日本も「他人事ではない」と鶴岡教授は指摘します。

慶應義塾大学 鶴岡教授
「自国の安全保障・自国の防衛を自ら行わないような国はアメリカは助けられないというのは、今までもそうだったわけだが、今後さらにそういった傾向が強まっていく。日本も相当強く認識しなければいけない」

欧州に広がる「自衛」の既定路線と軍拡のリスク

小川彩佳キャスター:
ヨーロッパ各国の動きですが、フランスの「一日兵役」はかなり具体的・実践的な訓練になっています。

教育経済学者 中室牧子さん:
トランプ大統領は、これまでもNATOに対する負担増加などを求めてきましたから、慶應義塾大学の鶴岡教授が指摘するように、欧州で自衛の動きが広がっているというのは、既定路線だと思います。

しかしリスクもあり、例えば国の間で軍拡競争になるということも考えられます。

また、欧州の国々は従来から福祉や教育に対して、非常に手厚い予算を割いてきましたが、防衛費の増加によって、(予算を)防衛費の方に振り替えざるを得なくなってしまい、国の形自体が大きく変わってしまうリスクもあるのではないかと思います。

これは日本にも突きつけられている課題ということで、このことについては議論が必要だろうと思います。

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<プロフィール>

中室牧子さん
教育経済学者 教育をデータで分析
著書「科学的根拠で子育て」

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