高市内閣への支持率60%超は「お化け数字」 背景に“中道分裂”と“失点の少なさ” 脱派閥人事でもチラつく麻生氏の影 総裁選にらむ林大臣の決断は【edge23】

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2026-09-12 06:00
高市内閣への支持率60%超は「お化け数字」 背景に“中道分裂”と“失点の少なさ” 脱派閥人事でもチラつく麻生氏の影 総裁選にらむ林大臣の決断は【edge23】

高市早苗内閣の支持率が再び上昇し、政権発足から10か月が経過してもなお60%を超えている。最新のJNN世論調査では60%を超え、ベテランの自民党議員からは「お化け数字」と呼ばれるほどの異例の高さだ。しかし、その支持率の「中身」を解きほぐすと、その背景には積極的な政策評価ではなく、野党の混乱と「失点の少なさ」という構造的要因があることが分かった。

【写真で見る】歴代内閣 発足から10か月後の支持率の変化

さらに注目されるのが、まもなく実施される自民党役員人事と内閣改造だ。「脱派閥」を掲げた人事の選定手法だが、麻生太郎副総裁の影響力が依然として色濃く漂う。そして来年秋の総裁選を見据えた高市総理の思惑とは何か。TBS政治部の室井祐作デスクが徹底解説する。

「支持率60%超」支持率上昇の理由は“底を打った”から?

9月に実施された最新のJNN世論調査では、高市内閣の支持率が前回から3.3ポイント上昇し、60%台を回復した。5月以降、下降傾向が続いていたなかで、その背景について室井デスクはこう分析する。

TBS政治部 室井祐作デスク
「上昇したというより、底を打ったと見るほうが自然です。国会が閉じていて野党から追及される場面が少なく、失点がなかったことが大きな要因」

つまり、「内閣が何か優れた政策を打った」から支持率が上がったのではなく、「批判される機会そのものが減った」という構造だ。また、物価高対策や消費税減税の議論が進んでいるものの、それが「一概に世論の受けがいいわけではない」ことも明らかにした。

高市内閣の物価高対策を「全く評価しない」「あまり評価できない」と答えた人が合わせて57%に上った。食料品の消費税引き下げについても賛成51%・反対42%と拮抗し始めており、「消費税減税が物価高対策として効果がない」と考える人は55%を超えている。

8月のお盆の時期に高市総理がXで物価高対策のアピール投稿を立て続けに行ったにもかかわらず、この数字であることが注目すべき点だと室井デスクは指摘する。積極的な政策評価が支持率を押し上げているとは見なしにくい状況であることが、分析で明らかになった。

野党第一党なのに支持率1.0%…中道の解散が“恩恵”に

支持率上昇のもう一つの要因としては、野党側の「敵失」だ。衆院野党第一党・中道改革連合は党支持率は結党当初の8.5%から1.0%にまで急落。室井デスクは「野党第一党としては致命的な数字」と述べ、非自民の受け皿が事実上崩壊している現状が高市内閣に恩恵をもたらしたと分析する。

そんな中道改革連合は9日には分裂が正式に決定。「分党」ではなく「分派」という方式を選択した。

理由は大きく二つあるという。一つはお金の問題だ。今年の政党交付金23.4億円のうち、すでに11.7億円が交付済みで、残る11.7億円は存続政党に全額交付される仕組みになっている。そこで、衆院選で多額の債務を抱えた中道改革連合にとって、1人を残して党を存続させることで残りの交付金を確保し、多額の債務返済に充てる必要があった。

もう一つは時間的な問題だ。分党では新党をそれぞれ立ち上げ、地方組織の解散など多くのプロセスが必要となり、来月からの臨時国会や春の統一地方選に間に合わない。立憲出身議員は新党を結成し、公明出身議員は公明党に復党。ただし20人が全員まとまって新党に移行するかどうかはまだ不透明で、国民民主党との連携や無所属を選択する議員がいるかもしれない。クラウドファンディングで集めた1億円以上の資金の扱いについても、まだ決着していない。

「お化け数字」過去の政権に見る高市政権の異様さとは

年代別の支持率を見ると、30歳未満の支持率が依然として80%と突出して高い一方、年齢層が上がるほど支持率が落ちていく傾向が顕著だ。50代が最も支持率が低い層となっている。

それでも政権発足から10か月が経過した時点で60%を超える内閣支持率を維持しているのはベテランの自民党議員が「お化け数字」と表現するほど異例の数字である。それは歴代政権との比較で際立つ。

過去6政権の「発足から10か月後の支持率」を分析すると、小泉純一郎内閣ですら就任時の88.0%から55.4%へと大幅に下落していた。しかも小泉氏の場合、下落の直接的な契機は田中真紀子外務大臣の更迭という「人事の失敗」だった。一度の人事判断が支持率を20ポイント近く急落させた事例だ。

鳩山由紀夫内閣は就任時80.1%の高支持率を誇りながら、自身の失言を重ね、10か月後には政権そのものが存在しなかった。

一方、第二次安倍内閣は就任時の66.9%から10か月後に68.5%へと上昇した特異な例だが、その翌月に特定秘密保護法の強行採決で15ポイント近く急落している。岸田内閣も10か月後は57.5%と安定していたが、その翌月から旧統一教会問題と閣僚の辞任ドミノが重なり急落していく。

室井デスクは、支持率が急落するパターンを「自身の失言」「人事の失敗」「賛否が拮抗する政策の強引な推進」「閣僚の不祥事」の4つに整理した。だからこそ、9月16日の党役員人事・17日の内閣改造は重要な意味を持つ。人事の失敗は即座に支持率の急落を招く。過去の教訓を踏まえれば、今回の人事が政権の命運を左右しかねない局面にあるという。

今回は“脱派閥”? アンケート重視で“不適材大臣”が消える?

今回の内閣改造と党人事を読み解くうえで欠かせないのが「脱派閥」という変化だ。麻生派を除く各派閥が事実上解散したことで、これまでの人事プロセスと大きく変容する。

かつての人事では、派閥領袖が総理のもとへ出向く「総理詣」が慣例だった。各派閥から一般的に衆院なら5期以上、参院なら3期以上とされる入閣適齢期の議員をリストアップし、推薦するというプロセスが機能していた。しかし今、それを行えるのは麻生氏ぐらいにとどまっている。

代わって重視されているのが全議員アンケートだ。当選2回以上の衆院議員を対象にプルダウン形式で配布され、政府役職・国会役職・党役職の3区分から最大第5希望まで記入して提出する仕組みとなっている。これまでも同様のアンケートは存在していたが、今回はより重視されているという。

室井デスクがアンケートの実物を関係者から入手して実際に試したところ、ひとつ興味深い点が判明した。党の役職の選択肢の中で「幹事長」だけが選べなかったのだ。幹事長代理や副幹事長、政調会長は選択できるのに、幹事長は候補に含まれていなかったのだという。これは「鈴木幹事長名で出されたアンケートだからではないか」と話す。

総理側近はこのアンケート重視の姿勢について「総理は人から聞いた話ではなく調査を見て自分で考えたい。派閥推薦では自分で責任が取れない」と話す。アンケートを総理と木原官房長官が熟読したうえで、実力本位の登用を行う方針だ。

派閥が存在した時代、アンケート自体は以前から実施されていたが、閣僚人事については派閥の意向がある程度反映されていた。アンケートは副大臣や政務官レベルでは参考にされても、閣僚については「派閥の推薦と総理の意向」で決まる構造が続いてきた。室井デスクも「ほんとにこの人が適材適所なのかという疑問符を持つような人も選ばれたりもしていた」と振り返る。

高市総理が重視する“能力”と“継続性”とは

今回の人事で重視されるポイントは、取材によれば二つに集約される。

一つは「次の国会を乗り越えられるか」という点だ。臨時国会の最大の焦点は食料品の消費税引き下げ法案とみられ、答弁の安定性・安全性のある人物を実力本位で選ぶことで「不適材不適所」の閣僚をなくし、国会での不安を払拭する狙いがある。

もう一つは「重要政策の継続性」だ。外交の季節を迎えるにあたって外務大臣の継続性が求められ、防衛大臣には年末に向けた安保3文書の改定という大仕事が控える。財務大臣については17の成長分野への投資の具現化と予算編成が待っており、継続性に観点からは留任が望ましい。幹事長・官房長官・外務・防衛・財務の骨格は留任させる見通しだという。

しかし「脱派閥」と言いながら、依然として麻生派だけは存続しており、その影響力は小さくない。

脱派閥でも…人事にチラつく麻生氏の影 試金石はあの議員?

麻生氏と高市総理との関係における分かりやすい指標として、室井デスクが注目したのは鈴木幹事長の去就だった。

鈴木氏は麻生氏の義理の弟であり、麻生派に所属している。その鈴木氏が留任するかどうかが、高市総理が麻生氏と「一緒にやっていくのか、決別するのか」を測る試金石だったという。結果として鈴木幹事長の留任は比較的早い段階で固まり、「麻生氏を捨てきれない」という高市総理の現実的な判断が透けて見えた。

その背景のひとつは消費税減税という難題だ。

麻生氏も鈴木幹事長も財務大臣経験者であり、財政規律派として知られる。減税について「心の中ではノー」であるはずの両氏を取り込むことで、党内のグリップを効かせ、消費税減税法案を乗り越えるためには両氏の協力は欠かせない。

そんな麻生氏が現在非常に評価しているのが、小林鷹之政調会長だという。皇室典範の改定をめぐる議論で麻生氏と小林氏が中心的役割を担ったことでより距離を縮めた。もともと麻生氏と茂木敏充外務大臣の距離が近いことを加味すると、室井デスクは「仮に高市総理が失脚しても、茂木氏と小林氏というカードを温存していると見ることもできる」と話す。

「来年の総裁選シフト内閣」注目集まる林大臣の去就

そして今回の人事のもう一つの側面が、来年秋の自民党総裁選を念頭に置いた「ライバル封じ込め」の構図だ。前回の総裁選で高市氏と争った茂木外務大臣・小泉進次郎防衛大臣が留任で調整、小林政調会長も留任を含め調整されている。閣内にいる限り、総裁選への立候補は難しくなる。自民党のベテラン議員も「完全に来年の総裁選シフト内閣だよね」と語ったという。

その中で最大の焦点となっているのが、林芳正総務大臣だ。

前回の総裁選で林氏は第1回投票の議員票において高市氏を上回っており、最も手強いライバルと見られている。高市総理としては林氏も閣内に取り込んでおきたいのではないかと室井デスクは指摘する。

林氏自身は側近議員に「閣外に出られるものなら出たいが、総理に残れとお願いされたら受けないわけにはいかない」と語っていると室井デスクは明かす。高市内閣の支持率が依然60%超という状況で閣外に飛び出すことは「非常にリスクが高い」一方、閣内に留まる限り内閣の方針に縛られ、総裁選への動きも制約される。

林氏を支援した議員からは「ここで閣外に抜ける度胸がなければ総理にはなれない」という声も上がっている。

過去には2014年、石破茂氏が高い支持率を誇る安倍政権下で閣外に出て、その後の総裁選に出馬した前例がある。室井デスクはその経緯を「当時も安倍さんはそんなに低い支持率ではなかった。まさに似たような感じで袂を分かった」と振り返った。

林氏がこのタイミングで同様の決断を下すかどうか、そこに今回の人事最大の注目点が集まっている。今回の組閣で林氏が閣外に出るかどうかについて、室井デスクは「可能性としては低い」との見方を示しつつも、その判断が来年の総裁選の行方を大きく左右するとみる。

また、小林氏の周辺の中堅・若手議員を閣内に取り込むかどうかも一つのポイントだと室井デスクは見ている。専門性の高い優秀な若手が複数おり、今回の組閣で入閣を果たすならば、高市総理の思惑がより鮮明に読み取れるという。

支持率という数字は、政権の現在地を示すと同時に、政治家たちの行動を規定する。「お化け数字」が続く今だからこそ、林氏の決断も、麻生氏の影響力も、高市総理の計算も、それぞれの重みを増している。

その答え合わせとなる組閣の日は、眼前に迫ってきている。

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