石川県能登地方をおそった記録的豪雨。24日夜、新たに1人の死亡が確認され死者は8人となりました。そして現地では今も多くの集落が孤立状態となっていて、住民からは「地震以上に破壊的だった」との声も聞こえてきます。
【動画】能登豪雨 8人死亡7人不明367人以上孤立「うちらの集落は破壊的で終わり」住民からは“被害は地震以上”との声も… 専門家に聞く“孤立が多い”理由【news23】
喜入友浩キャスター
「ここは気をつけて通りたいですね。右から土砂が崩れています。せき止めているコンクリートも崩されていますね。この先、孤立していた地域があるということです」
被災地を襲った豪雨から4日目。寸断されていた集落への道が、ようやく開かれました。
喜入友浩キャスター
「本来であれば車が通る道ではないですが、集落に向かうには、こうした道を通るしかありません」
元日の地震で隆起した海岸沿いの道を進みます。
喜入友浩キャスター
「孤立状態が続いていた南志見地区です。大雨の爪痕が、こちら家も川に向かって倒れこんでいます。道もなくなっていますね」
石川県輪島市の南志見地区。豪雨による土砂崩れで周辺の道路が寸断されました。
喜入友浩キャスター
「こうした木の根元部分が、まさにここに流されてきたということです。家の中の壁を見てみると、1メートル超えるほどの高さまで汚れています」
南志見地区は一時、孤立状態に。
喜入友浩キャスター
「土曜日の大雨から時間が経ちまして、泥が乾いてしまっています。車が通って風が吹くと、砂埃がかなり舞い上がります」
多くの住民が手作業で土砂のかき出し作業を行っていました。
南志見地区の住民 浜田栄八さん
「これはもっと上流にあった家。(Q.家の屋根ですよね?)もっと上から流れてきた。(Q.ここに家はなかった?)ここは川。電気、水道、みんなストップ。まだボランティアもなければ、何もない」
南志見地区は元日の地震でも大きな被害を受けていましたが…
南志見地区の住民 浜田栄八さん
「地震以上やね。地震より面倒、後始末。うちらの集落は破壊的で終わり。何で自分らの所と思う。しょうがない、半分諦めてしまっている。なるようにしかならんもん、どうするんや」
道路が開通し、買い出しにいってきたというこちらの夫婦。午後、家に戻ると…
南志見地区の住民 大久保京子さん(67)
「(電気が)きたんか。よかった」
しかし、断水は続いている状況です。
南志見地区の住民 大久保与次さん(70)
「でません」
南志見地区の住民 大久保京子さん(67)
「いま息子のところで頭だけ洗わせてもらっていて。街の中も水が細くて、シャワーとかが厳しくて。でも、お風呂は入れんね」
それよりも今、困っているのが…
南志見地区の住民 大久保京子さん(67)
「一番困っているのは情報が何も入って来ない。本当に静かなんです。口コミだけの情報というか」
朝から行われている捜索活動。輪島市では3人と連絡が取れていません。
ガードレールにせき止められた流木。その中を入念に見ていきます。飛び越えて裏側からも確認。消防や自衛隊など600人態勢で捜索が続いています。
行方不明になっている中学3年の喜三翼音さん。自宅からおよそ1キロの海岸には父親の姿がありました。
記者
「塚田川の河口近くの海岸です。翼音さんの父親が友人らとともに捜索にあたっています」
流木が重なり合う海岸で、娘の手がかりを探っていく鷹也さん。手にはクッションのようなものが…
翼音さんの父親 喜三鷹也さん
「いま息子に聞いたら、翼音が最近まで使っていた枕になりますね」
ほかにも、翼音さんの部屋のカーテンなどが見つかったそうです。
また、祖父の誠志さんは捜索に関わっている人たちに感謝の気持ちを口にします。
翼音さんの祖父 喜三誠志さん
「たくさんの方々が集まって、本当にご尽力いただいて。何とか見つけてほしい。それだけです、今の願いは」
誠志さんは輪島塗りの職人。翼音さんは金沢市で開かれた出張輪島朝市に出店した際、接客などを手伝ってくれた自慢の孫です。
翼音さんの祖父 喜三誠志さん
「夏休みもずっと、土日もずっと来てて、出張朝市を手伝ってくれたんですよ。本当に優しい良い子なんでね。本人1人でも任せられるようになっていた。それで今いなくなってね、これからもう孫のいない人生は本当に考えられないという気持ち」
翼音さんの同級生も捜索を見守っていました。
翼音さんの同級生
「1秒でも早く見つかって、声をかけたいです」
「きょう、本当は体育祭だったんですけど、中止になって。みんなで一緒に体育祭したいです」
また、珠洲市では土砂崩れの現場で女性を発見。24日、救出されましたが、その場で死亡が確認されました。この地区では高齢女性が安否不明となっていて、警察が身元の確認を進めています。
石川県ではこれまでに8人が死亡、7人の行方や安否が分かっていません。
豪雨は復興が進む観光名所にも、甚大な被害をもたらしました。
白米千枚田愛耕会 堂下真紀子さん
「あそこの山が崩れて、田んぼに土砂がかかっちゃったので。当日ここに避難してきたときに、ちょうど崩れてたんですよ。それを見てたんですけど、すごいショックというか」
世界農業遺産のシンボル「白米千枚田」。元日の地震では、田んぼのあぜに亀裂が入るなどの大きな被害が出ました。しかし、地元の生産者たちが復旧を進め、今月上旬には稲刈りを終えたばかりでした。
白米千枚田愛耕会 白尾友一会長(今月4日)
「やっとこの日が来た。やっぱりうれしいですし、みんなの力を借りてここまで来たので感謝しかないですね」
ところが、今回の豪雨では大規模な地滑り被害に見舞われる事態に。復旧を進めていた田んぼも再び崩れました。
白米千枚田愛耕会 堂下真紀子さん
「追い打ちをかけられたような。なんでしょうね、本当にみんなでよし頑張ろうと思ってコツコツやってきたところに、少しずつ積み上げてきたものが、またこのタイミングで。地震のときよりもショックは大きかった。痛々しいけど、やっぱり好きなんで。かわいそうだなと思いながらも、なんとかしてあげたいなって」
記者
「今、西二又町から避難住民を乗せた自衛隊のヘリが輪島分屯基地に着陸しました」
自衛隊のヘリで孤立集落から救助された住民は皆、安堵の表情を見せていました。
孤立集落から救助された女性
「大丈夫でした、ありがとうございました」
一方で…
孤立集落から救助された男性
「橋も3つほど落ちてもうて。完全に孤立してもうて、行くところなくなった。食べるものもなくなったし」
孤立した集落のひとつ、輪島市東山町から救助された広瀬さんに話を聞くことができました。
孤立集落から救助 広瀬陽希さん(22)
「土砂崩れで道路が寸断されて、孤立という状況になりました」
稲刈りなどの手伝いをするため親戚の家に滞在していた広瀬さんでしたが、豪雨ですぐに道は川のような状態に。さらに…
孤立集落から救助 広瀬陽希さん(22)
「信じられないような大木が倒れていたり、土砂崩れが20メートル目の前で起きている状況だったので(避難は)無理かなと」
停電した上、電話も通じない状況に陥った広瀬さんでしたが、唯一、衛星を使ったWi-Fi通信がつながっていたためSNSで発信を続け、23日朝、消防に救助されました。
孤立集落から救助 広瀬陽希さん(22)
「通報しないと1か月くらい取り残されるかなと思っていたので、救助されてよかったと思っています」
大雨により孤立した集落は最大で17地区・115か所(22日午後4時時点)。現在も12地区・46か所(少なくとも367人)が孤立状態となっています(24日午後4時時点)。
なぜ、能登では孤立が多いのか。専門家は「能登ならではの地形が関係している」と指摘します。
金沢大学 青木賢人准教授
「(能登は)山が高くないんですよ。どこに行っても畑とか田んぼが作れる。能登は大体どこに行っても人が住んでいるという意味では、いろんなところに小さな集落があって、それが道路の寸断で孤立していく傾向がある」
「どこにでも住むことができる」結果、「集落が点在」し、道路や橋がひとつ寸断されると多くの集落が孤立してしまうのだといいます。さらに…
金沢大学 青木賢人准教授
「集落自体は川沿いの狭い平野にあるケースが多いので、河川が氾濫して、孤立あるいは河川沿いの住居の被害を深刻な状態にした」