「情けは人の為ならず」、この言葉は意味を勘違いされている言葉の定番とも言えます。
ある調査では、正しい意味と誤用表現を認識している人の割合はほぼどうという結果も出ています。
そこでここでは、「情けは人の為ならず」がどのような言葉なのかを解説します。
「情けは人の為ならず」とは
まずここでは、「情けは人の為ならず」の意味やどのように用いるのかを見ていきましょう。
「情けは人の為ならず」の意味
「情けは人の為ならず」は、人に親切にすればそれが巡り巡って自分によい報いとして返ってくるという意味のことわざです。
つまり、親切は自分に返ってくるということになります。
「情けは人の為ならず」の用い方・例文
「情けは人の為ならず」は善業に対して、いいことが返ってきたという意味合いで用いられます。
下記で3つほど例文をあげますが、いずれも同様の用い方をしています。
・歩道橋の前で大荷物を背負い困っているおばあさんがいた。そこで荷物を持って上げたらお礼にお菓子をもらった。これこそ「情けは人の為ならず」だ。
・情けは人の為ならずというのはまさにその通りで、いつも誰にでも親切で優しい彼女のミスを、みんなで挽回した。
・情けは人の為ならず。困ったときはお互いさまというやつです。
勘違いされやすい?「情けは人の為ならず」
「情けは人の為ならず」は意味を勘違いされている言葉の定番ともいえる存在です。
実際、かなりの割合で意味を間違えて認識しているという調査結果も出ています。
文化庁の調査
文化庁が平成22年度に行った『国語に関する世論調査』。
その中に「情けは人の為ならず」の意味に関する問いも入っていました。
その結果、人に情けを掛けておくと巡り巡って結局は自分のためになるという回答が45.8%。
人に情けを掛けて助けるのは、その人のためにならないという回答が45.7%となりました。
2つの回答差はわずか0.1%とほぼ同様の割合だったということが分かります。
ちなみに、情けを掛けて助けるとその人のためにならないという意味のことわざは別にあります。
人のためにと思ってした事がかえって悪い結果を呼ぶ、という意味の「情けが仇」です。
「ならず」の現代語への訳し方がポイント!
「情けは人の為ならず」の意味が異なる意味で認識されているのには、「ならず」という言葉が関係しています。
「ならず」はたしかに否定形の一種です。
「断定のなり+否定形」なので、現代語に訳すと「ではない」となります。
そのため、「情けは人の為ならず」は「情けは人のためではない」となります。
ですから「情けは人のためではなく、自分のためのもの」という解釈に結びつくのです。
「情けは人の為ならず」の類義語
「情けは人の為ならず」には、いくつかの類義語があります。
ここでは、「善因善果」「仇も情けも我が身より出る」について見ていきましょう。
善因善果
「善因善果」は、良い行いはよい結果で必ず報われるという意味の四字熟語です。
「善因」はよい行い、「善果」は良い結果のことを表しています。
この言葉は、仏教用語として生まれました。
仇も情けも我が身より出る
「仇も情けも我が身より出る」は、人から恨まれるのも愛されるのも相手の気持ちというのは、自分の行いや心がけが反映されたものである、という意味です。
相手が自分のことを嫌うのも慕ってくれるのも、すべて自分が相手に抱いている気持ちや行動次第という事になります。
まとめ
「情けは人の為ならず」は、人に親切にすればそれが巡り巡って自分によい報いとして返ってくるという意味です。
しかし、「為ならず」の訳し方の問題もあって「情けを掛けて助けるとその人のためにならない」という意味だと思っている人も一定数います。
実際には「断定のなり+否定形」なので、「親切は人のためにするのではない(自分のためだ)」となります。