有名人を騙る投資詐欺について、前澤友作さんは法的措置も検討していると語ったほか、被害者らも近く集団訴訟を起こすことがわかりました。プラットフォーム側への規制についても考えていきます。
【写真を見る】“ニセ広告”掲載側の責任は?有名人をかたる投資詐欺問題 被害者らが近く集団訴訟へ【Nスタ解説】
池上彰さん「Meta社はニセ広告の削除を全く対応してくれない」
ジャーナリストの池上彰さん。投資を誘う偽広告に利用されている有名人の一人です。
ジャーナリスト 池上彰さん
「許せないですよね。本当に許せないですよね。犯罪ですからね、これね」
池上さんのニセ広告を見た人は、投資情報をやり取りするLINEグループに誘導されます。そして、FX投資のニセサイトにさらに誘導され、現金を入金させられたあと、ニセサイトは封鎖。以後、連絡が取れなくなるのです。
Nスタが確認しただけで「池上彰」のほか「池上彰【公式】」「池上-彰」「池上彰『LINE』」「池上教授」など、9人もの“ニセ池上彰”のアカウントが存在します。
池上彰さん
「いくつもあるんですね。びっくりしました。こんなに沢山、ニセ池上がネット上に氾濫しているのか?というのは驚きですしね」
さらに登場するのが、アシスタントを名乗る女性のアカウント。
池上彰さん
「そもそも私にはアシスタントいませんから。マネージャーもいませんし、たった一人で行動していますから」
本人も、アシスタントもデタラメ。そしてついには、本人になりすましたフェイク音声まで。
池上彰さん
「声の質は私そっくりですね」
こうしたニセ有名人に騙されて、投資に応じ、その金を騙し取られたと訴える人が相次いでいるのです。
50代
「ホリエモンさんとか前澤さんとか、色んな方の所をクリックしちゃって…最終的に610万円振り込みました」
60代
「有名アナリストと言われる方から、勉強しませんかと…トータルで2000万円の被害です」
池上さんはMeta社に対し、こうしたニセ広告の削除を求めていますが…
池上彰さん
「写真も勝手に使われていたり、とにかくやめて欲しいと申し入れていますが、全く対応してくれませんよね」
前澤友作さん「(Meta社の対応は)単なる怠惰としか思えない」
憤っているのは、この人も…
実業家 前澤友作さん
「神妙な顔で取材を受ける立場ではないんですけど、『宇宙行ったぞ』とか普段やってるんですけど、今回は僕が動かないとますます酷くなるという責任も感じていて」
実業家の前澤友作さん(48)。フェイク動画まで使われていました。
フェイク動画
「こんにちは。私“ゼンザクユウサ”は、日本人に高収入をもたらす新規の投資プロジェクトをご紹介したいと思います」
名前の部分は不自然ですが、実際のインタビュー映像が、投資を勧める内容に作り替えられていたのです。こうした、自身のニセ広告については…
前澤友作さん
「まずびっくり。そして、何てことをしてくれるんだと。悲痛な声がすごく多いので、僕も胸が痛い」
3月、前澤さんはSNS上で、有名人のニセ広告の被害者から情報提供を求めました。その結果、10日間で184件、約19億5000万円の被害報告が寄せられたということです。
前澤さんもMeta社に対し、ニセ広告の削除を申し入れていますが…
前澤友作さん
「『善処します』と。『AIを使ったり人の力を使って、なるべく出ないようにはしますが、全てが削除できないことはご理解ください』という主旨のレターが返ってきて。いやいや、全て消してほしいんですけどと。(ニセ広告は)減らないどころか増えているので、単なる怠惰だとしか思えない。
僕が今後何か真面目に言ったところで、『前澤さんが言うことは本当だろうか?』『詐欺なんだろうか?』と、消費者やユーザーは理解できなくなってしまう。本当に責任は重大だと思う」
法的措置を検討しているという前澤さん。
一方、ニセ広告による投資詐欺の被害者は…
Meta社に対して集団訴訟 原告団 代表
「FacebookにしろInstagramにしろ、私たちの生活の中には溶け込んでおりますし、日常的にSNSに触れる機会って、現代人は普通に生活の一部になっていると思うので、(ニセ広告が)日々流れているということで、それを不法行為という風にとらえて訴訟を起こそうとしています」
Meta社に対して集団提訴する原告側は「Meta社は投資詐欺被害の事実を知りながら広告を出し続け、収益も得ている」と主張。日本法人のFacebook Japanに対し、約2000万円の損害賠償を求め、神戸地方裁判所に4月中に提訴する方針です。
今回の提訴についてFacebook Japanにコメントを求めましたが、2日午後4時までに返事はありませんでした。
EUでは違法コンテンツの排除・対応を義務付け、厳しい課徴金も
井上貴博キャスター:
詐欺広告の取り締まりや削除は、技術的には可能といわれています。それをやらないのはプラットフォーム側の怠慢であろうということで、いよいよ法整備をどうしていくべきなのかといった議論も起きつつあるわけです。
ニセ広告について、総務省としてはGoogleとMetaに対してヒアリングを実施しました。2社は、広告削除やアカウント停止などの対策を実施していると回答。
ところがニセ広告はどんどん上がってきますので、私たちは「これどうなんですか」と、Metaに違反報告をしました。そうすると「審査したところ、広告規定に違反するものではありませんでした」と回答があり、削除されませんでした。
何回かやり取りをして「やっぱりおかしいですね」ということで最終的には削除されたのですが、これで本当に対策を実施しているといえるのでしょうか、甘すぎませんかということですね。
海外では、EUは法律を制定し、GoogleやXなどに違法コンテンツの排除・対応を義務付けています。違反した場合は課徴金があり、最大で世界全体の売上高の6%を徴収するということで、かなり厳しい対応を取っています。
各社を監視するために1年間で80億円ぐらいかかる費用も、「最終的にはあなたたちがしっかりと負担してね」というような枠組みを、早くも作っています。
前澤友作さんは「日本では現状、プラットフォームに対し大きな責任が問われていない。広告掲載の停止など、厳しい罰則を与える必要がある」と語っています。
もちろん法律の話になるので、表現の自由をどこまで守りながら、どこからノーとしていくのか。このあたりの議論ということになるんでしょうね。
ホラン千秋キャスター:
ただ、写真などは肖像権もあるので、表現の自由として勝手に使っていいということにもならない場合が多いと思います。広告もそうですし、あとはアカウントそのものですよね。“公式”というふうに謳っているけれども、公式ではない。それをすべて、どうやって私たちの目で見抜いていくのか。こぼれてしまう部分もあるんですね。
元競泳日本代表 松田丈志さん:
プラットフォーム自体が外資のものなので、たとえば日本では有名な方でも、海外の人から見たら同じ一人のアジア人にしか見えないという現実もあると思います。あとは言語の壁もありますから、どうしても外資のプラットフォームに我々が頼っている部分も一つ、課題としてあるなと感じます。
僕もちょっと検索して広告を見てみましたが、ニセ物なのか本物なのか、短時間だと本当にわからない。これを信じてしまって騙される人が多くいるんだなというのは、実感としてありましたね。
ホランキャスター:
広告から飛んでしまうと、やはりわからなくなってしまうということがあると思います。
たとえば公式ホームページがそれぞれの著名人の方にある場合は、どんな広告を担当しているかという欄もあると思うので、そこから確かめるということもできると思うのですが、必ずしもそういうホームページがない方の場合は、どう判断したらいいのか。難しいですよね。
元競泳日本代表 松田丈志さん:
プラットフォーム側への努力を求めるのも当然必要ですが、やはり我々個人がいかに自己防衛するかも、しっかりやっていきたいところですよね。