人とのコミュニケーションを苦手とする人を人見知りと呼ぶように、犬とのコミュニケーションを苦手とする犬は「犬見知り」と呼ばれることがあります。犬見知りであることが必ずしも不幸だとは言えませんが、愛犬の犬見知りをなんとか克服させたいと考える飼い主さんも多いでしょう。内気な犬が他の犬に対して見せる行動や犬見知りを克服させる方法などをご紹介します。
犬同士のコミュニケーション能力が大切な理由
『動物愛護管理法(動物の愛護及び管理に関する法律)』では、販売しても良いのは生後8週齢以降の犬だと定められています。そしてこの頃から生後12週齢頃までの子犬は、非常に好奇心が旺盛で、さまざまな刺激を嫌がらずに受け入れられる素地を持っています。
しかしこの時期を過ぎると、好奇心に代わり警戒心が強まってきて、臆病な面が強く見られるようになります。そのため、生後8〜12週齢頃までの時期は「社会化期」と呼ばれ、犬や人とのコミュニケーションの取り方を学ばせ、社会に適応させる最適な時期だといわれています。
この時期にうまく犬との付き合い方を学べなかった犬や、過去に怖い思いをした犬、他の犬と接する機会の少ない犬は、他の犬とのコミュニケーション方法が分からず、内気で犬見知りになってしまいやすいです。
この先もずっと飼い主さんとだけ暮らしていけるのであれば、無理に犬見知りを克服しなくても良いでしょう。しかし、もしも災害や飼い主さんの病気等で別れが訪れたときに、犬見知りな犬は非常につらい生活をしなければならなくなるかもしれません。
内気であるがゆえに将来的につらくなってしまうであろう状況を避けるためには、愛犬の「犬見知り」を克服させてあげた方が良いでしょう。
内気な犬がする「犬見知り」な行動
内気な犬の「犬見知り」を克服させるためには、まずは「犬見知り」な行動について理解しておく必要があります。
1.近付かない
ドッグランに行ったのに、他の犬たちの輪の中に入れず、隅の方や木陰、飼い主さんの後ろなどに隠れていて遊べない犬は、犬見知りの子が多いです。見方によっては、愛想笑いのような表情を浮かべているかもしれません。
また、他の犬が近寄ってくると凍りついたように動けなくなったり、逃げ回ったりすることもあります。
このような行動は、愛犬が他の犬との付き合い方を理解できていないことに加え、他の犬に対する警戒心の強さからくるものだと考えられます。
2.挨拶しない
犬同士の付き合い方がわかっていない端的な行動が、他の犬と挨拶できないことです。自分の意志でしないのではなく、挨拶の仕方がわかっていないケースが多いです。
犬との付き合い方を知らないために、相手が嫌がっていることに気付けず、しつこくつきまとってしまう子もいます。こういう子は、いつか相手からこっぴどい仕打ちを受け、それをきっかけに犬見知りになってしまうことがあります。
いずれにしろ、犬同士のコミュニケーション法を知ることは、愛犬自身の身を守るためにも必要なことだと考えた方が良いでしょう。
3.攻撃的になる
相手の犬と距離を取ったり逃げたりするのは、相手への警戒心からです。警戒心の元は、相手への恐怖心です。この恐怖心が強くなりすぎると、攻撃的な行動に変わります。散歩の途中ですれ違う犬に唸ったり吠えたりするのは、恐怖心の強さのあらわれなのです。
他の犬と出会う度に怖い思いをさせるよりは、少しずつでも他の犬との付き合い方を覚えてもらい、いたずらに怖がらなくてもよいということを教えてあげた方が、愛犬の快適な暮らしのためにもよいのかもしれません。
愛犬に「犬見知り」を克服させる方法
ではここからは、愛犬に「犬見知り」を克服させる方法について解説します。
他の犬との接触を無理強いしない
愛犬の犬見知りを克服させるためには、他の犬との交流が必要だと考え、積極的にドッグランや犬の多い公園を散歩する飼い主さんがいらっしゃいます。しかし、それはいたずらに愛犬を怖がらせるだけで、あまり克服には役に立たないでしょう。
まずは散歩のコースや時間帯を変え、他の犬との接触をできるだけ少なくすることで、散歩自体を嫌がらないようにしてあげましょう。そのうえで、ごく少数の気の合いそうな犬との出会いを作ってあげることをおすすめします。
そのためには、散歩コースや公園などで出会う飼い主さん同士が仲良くなることです。愛犬の性格を知ってもらった上で、犬同士の付き合い方の練習をさせてもらいましょう。飼い主さん同士が仲良くなることで、愛犬も安心して相手の犬と向き合えるようになるでしょう。
愛犬の犬見知りを克服するためには、飼い主さんご自身も、人見知りではいられないのです。
ただし、飼い主さん同士の会話に夢中になってもいけません。嫌な体験をすると、さらに犬見知りに拍車がかかってしまいます。犬同士の様子を観察し、万が一の場合には、すぐに相手の犬から引き離せるようにしましょう。
少しずつ出会う犬の数を増やしていく
限られた犬との交流ができるようになってきたら、少しずつ他の犬にも出会えるように、散歩コースや時間帯を見直したり、犬が集まるような場所に出かけてみたりしてください。
ただし、この場合も決して無理強いするのではなく、あくまでも愛犬のペースで焦らずゆっくりと慣らしていきましょう。
ドッグランに挑戦する場合
そろそろドッグランにも挑戦させられるかなと感じたら、事前に空いている時間帯や利用者層などを確認した上で挑戦してみましょう。あまり広すぎず、犬のサイズ別に区切られている施設が良いでしょう。
入場する前に、愛犬と一緒にドッグランの周囲をぐるりと回ってみるのも良いです。その後入場し、リードを付けたまま一緒に過ごしましょう。遊んでいる他の犬たちを、一緒に眺めているだけでも意味があります。
ここでも他の犬との交流を無理強いせず、愛犬のペースで進めましょう。リードを外すのは、愛犬が他の犬に対して自信をつけてきたと実感できてからで充分です。その場合も、愛犬から目を離さないようにしましょう。
まとめ
犬と友だちになれない犬が、必ずしも不幸だとは言えません。飼い主さんやご家族からの愛情をたっぷりと受け、安全な環境で幸せに暮らしていけるでしょう。
ただし、これから先に何が起こるかはわかりません。いつまでも一緒に暮らせる保証はないのです。
そう考えると、愛犬をきちんと社会化し、犬見知りを克服させてあげることは、愛犬の幸せにつながるはずです。飼い主さんの愛情に守られながら、時間をかけてゆっくりと慣らしていくことで、愛犬の心も少しずつ開いていくでしょう。
個々の犬の性格や体験、年齢などによって時間がかかったり難しかったりするかもしれませんが、諦めずに社会化の努力を続けることが大切です。
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