「ポスト岸田」候補が10人を超えるなか、小林鷹之・前経済安保担当大臣が初めて正式に立候補を表明しました。乱立模様の自民党総裁選ですが、「派閥」「裏金」「旧統一教会」などの問題に、正面から向き合う候補は現れるのでしょうか。
【写真を見る】小林鷹之氏が出馬一番乗り 旧統一教会関連イベント参加は「軽率だった」 乱立する自民党総裁選 出馬“意欲”の最年少・小泉進次郎氏と最年長・上川陽子氏は…【news23】
「知名度ない」から出馬一番乗り
「まもなく小林鷹之議員の会見が行われます。今回の総裁選で正式に立候補を表明するのは小林氏が初めてということで多くの報道陣が集まっています」
会見前、会場の一角に報道陣が集まっていました。
「無派閥を含めいろいろな派閥から集まっています」
麻生派 斎藤洋明衆院議員
「小林さんは一番今の自民党を変えてくれる人だと思っていますのでそれで今日駆けつけました」
安倍派 福田達夫衆院議員
「我々の代表として一番いいのは誰だろうという話をする中で小林鷹之という話になった」
これまで11人が出馬の意欲を示している自民党総裁選。一番乗りで出馬を表明したのが小林鷹之議員でした。
小林鷹之衆院議員
「私は今回チャレンジャーの立場です。知名度もありません。でも私は今回の総裁選挙に単なる顔見せとかそういう思いで臨んでいるわけではなくて仲間とともに勝ち抜く覚悟で臨んでいるんです」
小林議員は千葉県生まれの49歳。東京大学を卒業後、当時の大蔵省に入省しました。退職後、2012年の衆議院選挙で初当選。防衛大臣政務官や経済安保担当大臣などを務めました。
会見で掲げたのは社会保障制度改革や憲法改正など。さらに…
小林鷹之衆院議員
「脱派閥選挙をこの総裁選で徹底します。旧派閥に対する支援は一切求めません。自民党は生まれ変わる」
脱派閥を掲げた小林議員。元々は、二階派に所属していました。
小林鷹之衆院議員
「力を背景として政治を動かすというやり方はもはや今の時代にそぐわないのではないか」
大きな身振り手振りを交えながら語った小林議員。一方で過去に旧統一教会の関連イベントに出席していたことも問われました。
小林鷹之衆院議員
「地元の方から誘われまして、いま振り返れば主催者の確認をもっと徹底してやっておけばよかったなと。ある意味軽率だったと反省しています。当然こうした団体の方たちとの関わり合いはないですし今後持つつもりはないし、そうならないようにしっかり気を付けていきたい」
出馬に“意欲” 最年少と最年長
岸田総理の後釜として自民党総裁の椅子に座るのは誰か。11人の中で最年少の小泉進次郎氏は…
Q.総裁選の対応どう考えているか?
自民党 小泉進次郎元環境大臣
「この場所は総理官邸ですから総裁選に触れるのは適切ではないと思いますのでそこは控えさせていただきます。お疲れ様でした」
一方11人の中で最年長、71歳の上川陽子外務大臣は、自身のXで…
上川議員のXより
「私の外務大臣就任以来、初のインド訪問!」
「今日の機長は女性!様々な分野で女性が活躍されています。行ってまいります!」
ここ最近は外務省の投稿のリポストばかりでしたが、この週末から電話で支援を呼びかける様子などを写真つきで投稿。電話機にはねじり鉢巻きが。
岸田派に所属していた上川氏。同じく岸田派だった林官房長官の名前もあがっていて、支援が割れるのではという見方もありますが、インド訪問前に取材に応じた上川氏は…
自民党 上川陽子外務大臣
「いま派閥は存在いたしませんので私は派閥という枠組みの中で考えていないということは明確に申し上げたい」
自民党総裁選の日程は来月27日の投開票で固まりました。一方、23日には、立憲民主党の代表選の投開票が行われます。
立憲民主党内では、野田元総理待望論が広がっている一方、枝野前代表が立候補の意向を示し、現職の泉代表も続投を目指しています。
派閥解消で乱立模様も実態は?
上村彩子キャスター:
自民党総裁選は、19日に立候補を表明した小林鷹之氏を始め、ご覧の名前が挙がっていて乱立模様となっています。ただ、星さんによりますと、これは自民党の苦境の表れだということですがどういうことでしょうか?
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
自民党は、いま裏金問題で結党以来最大の危機にあると言ってもいいのですが、その中でこれは大変だと手を挙げようという人が増えてきました。これ自体は、結構なことです。今まではそれに対してその派閥の親分が抑え込んできましたが、それがなくなりました。ですが、このメンバーを見てこれまでの裏金のときに積極的にその真相解明すべきだとか、抜本的な政治資金のあり方を改革しようと大きな声を上げた人が果たしているかどうかとなるとちょっと疑わしいです。なので、やや説得力を欠く議論になっています。
藤森祥平キャスター:
今、お話に出た結党以来最大の危機と、その裏金問題についてこちらをご覧ください。19日の小林さんの出馬会見の中で、裏金問題の実態解明について記者から聞かれました。その答えがこちらです。
「私も実態がよくわからない。検察当局が調べる中で不起訴処分になっている。自民党が調査するのも一定の限界があると思う」
若手を束ねて悪しき慣習を本気で改革する気持ちを示すのかなと思いましたが…
星浩さん:
勢いのいいこと言った割には他人事になってますよね。多くの国民の疑問はこの裏金が何に使われたのか、脱税じゃないのか、抜本的な政治改革ができているのかどうかなのですが、それに対してはほとんど答えていないです。
これからも論戦が続きますので、その中でぜひもう少しまともな改革の方向を議論してもらいたいと思います。
藤森祥平キャスター:
世代交代という点で、海外では30代40代のリーダーが珍しくない中で、小林さんは40代後半であり永田町では若い方になりますが、斎藤さんにこの自民党総裁選はどう映りますか?
東京大学准教授 斎藤幸平さん:
小林議員は、「コバホーク」とも呼ばれて若い方です。
ですが、いま星さんもお話したように裏金の問題にしっかり取り組もうという気も映らないし、旧統一教会との関係もあり、そういう人が急に今回総裁選に出て、急に党の改革のようなことを言い出して、それに説得力をどれほど感じるかとなると、今だけなのではないかと私は疑ってしまいます。党全体に自浄作用がない中で、トップだけを変えても仕方がないのに結局このような形で、連日マスメディアを利用して自民党が広報活動を行うような状態になってるのは大変遺憾に感じています。
上村彩子キャスター:
乱立模様となっていますが、名前が挙がっている11人の候補者のうち、いま星さんが有力視されてるのはどなたでしょうか?
星浩さん:
レースが始まったばかりですが、石破さんは今まで4回負けて今回5度目の挑戦で推薦人20人は固まったとのことで、地方票は非常に強いんですよね。
ですから石破さんが少しリードして、それを追いかけるかたちで政策に強い林さんや加藤さん、人気者の進次郎さんなどが石破さんをどのように追いかけていくのかがポイントだと思います。
藤森祥平キャスター:
解散総選挙が行われる前までの当面の間は、この11人の中から選ばれる次期新総裁が総理大臣になりますが、斎藤さんはどのあたり注目されてますか?
斎藤幸平さん:
国民が求めてるのは裏金問題だし、経済で言えばインフレや円安、アベノミクスの出口を見出していくことだと思います。ただ、その経済関連で言えば、先程のニュースにもありましたが8月の台風や酷暑、ゲリラ豪雨、それに伴う米不足・野菜不足などの気候変動の影響が出てきています。なので気候変動対策の簡素化をしっかり党内で議論してビジョンを示してほしいなと思います。
一方で、立憲民主党の方は野田さんや枝野さんが出てきて、自民党よりもさらに新鮮味がない感じになっているのが、自民党からすればラッキーかもしれません。
野田元総理に出馬要請も
藤森祥平キャスター:
ほぼ同時期に立憲民主党の代表選もあり、これはもう自民党総裁選よりもっといろいろ具体的に発信しないといけないですね。
星浩さん:
私達は自民党と立憲の動きを準決勝だと見た方がいいと思います。準決勝をして、お互いに総選挙という名の決勝で争うという、そういった点では自民党が一番警戒してるのは野田さんです。なぜかというと野田さんに対して自民党は、立憲は共産党と組むとはなかなか批判しづらいですから。野田さんは保守系なので、その辺はおそらく立憲の中でもこれから動きが出てくると思います。
上村彩子キャスター:
そしてNEWS DIGアプリで皆さんに伺っている「みんなの声」。今夜は「自民党総裁選で最も重点的に議論してほしいこと」について伺いました。既に2100人以上の方から回答いただいています。最も多いのが「裏金と派閥」で、半数以上の数字となっています。私達もしっかりと注目していきたいと思います。
自民党総裁選について「みんなの声」は
NEWS DIGアプリでは『自民党総裁選』について「みんなの声」を募集しました。
Q.自民党総裁選 最も重点的に議論してほしいのは?
「裏金と派閥」…52.7%
「経済政策」…26.1%
「少子高齢化」…7.3%
「安全保障」…5.1%
「憲法改正」…3.5%
「その他・わからない」…5.3%
※8月19日午後11時16分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは20日午前8時で終了しました
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<プロフィール>
斎藤幸平さん
東京大学准教授 専門は経済思想社会思想
著書『人新世の「資本論」』が50万部突破
星浩 さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年