自民党総裁選 茂木幹事長「増税ゼロ」発言が波紋 “岸田総理も怒っている” 河野氏も政策発表 “将来の年末調整廃止”主張【Nスタ解説】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-09-05 21:12

自民党総裁選に出馬表明した茂木幹事長と河野デジタル大臣が、5日、政策を発表しました。4日に「増税ゼロ」を掲げ、党内で波紋が広がっている茂木氏ですが、なんと答えたのでしょうか。

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「明智光秀に失礼だ」 茂木氏の「増税ゼロ」発言が波紋

4日、自民党総裁選への出馬を表明した茂木幹事長(68)。党内に波紋を広げたのがこの発言です。

自民党 茂木敏充幹事長
「防衛増税、子育て支援金の保険料の追加負担、それぞれ1兆円は停止し、新たな財源確保策で対応します」

成長戦略による税収増などで新たな財源を確保し、「増税ゼロ」で政策を推進していくと訴えました。

ただ、自民党幹部でありながら岸田政権の方針を修正する発言に、ほかの候補者からも疑問の声が…

自民党 小泉進次郎元環境大臣(43)
「今まで岸田総理・総裁を支えてきた幹事長として、それをどのように考えるかを問われているのではないかと思います」

自民党 石破茂元幹事長(67)
「経済成長がどれぐらいあるのか、それによって増収がどれぐらい見込めるのか、スローガンだけ言ってもどうしようもない」

また、4日に岸田総理と面会した議員は、こう話しています。

岸田総理と面会した議員
「岸田総理も怒っている。『あれは何なんだ』って」

これまで、主君を裏切る「令和の明智光秀」と揶揄されないよう、出馬表明の時期などにも配慮してきた茂木氏。

ある「ポスト岸田」候補
「もはや明智光秀に失礼だ」

党内から批判の声が相次ぐなか、5日の政策発表会見では…

自民党 茂木敏充幹事長
「これまでの政策は継続しつつ更に進めつつ、財源については新たな工夫をするということ」

“これまで進めてきた政策と発言に矛盾はなく一貫している”と強調。財源の確保は、▼年金積立金の運用や、▼成長分野への投資などで確保は可能だとしています。

また、4日の会見では、政党から議員個人に支給される「政策活動費」について「廃止」すると主張した茂木氏。

すでに出馬表明している小林前経済安全保障担当大臣も、5日、自身のSNSで「使途を毎年公開できないようであれば、これを廃止することも検討すべき」と投稿しました。

一方、茂木氏に先立ち政策発表を行った河野デジタル大臣(61)は…

自民党 河野太郎デジタル大臣
「政策活動費だろうが非課税になっているものについては、領収書を付けて速やかに報告するのが良いのだろうと思います」

政策活動費については、継続することを示唆しました。

また、会見では、所得などに関わる情報を自治体と共有することで、将来的に会社員などが所得税額の過不足を調整する年末調整を廃止し、全ての国民に確定申告を求めることなどを主張しました。

総裁選には12人が出馬を表明、または意欲を見せていますが、候補者たちの戦いは熱を増しています。

継続か廃止か…「政策活動費」が争点に?

加藤シルビアキャスター:
5日、きたる総裁選に向けて政策発表会見を行ったのが河野太郎デジタル大臣(61)と茂木敏充幹事長(68)の2人です。

まず、河野デジタル担当大臣は「政策活動費など非課税のものは、領収書を付けて速やかに報告するというのが良いんだろう」と、政策活動費については継続を示唆しました。また、将来的に年末調整を廃止し、確定申告に一本化することなどに言及しています。

そして、茂木幹事長は「政策の方針は全く変わらない。一方、財源については新たに確保する工夫がある」と、年金積立金の運用、成長分野への投資などで、「増税ゼロ」が可能であるとしています。

また、これまでに正式に立候補を表明しているのが小林鷹之前経済安保担当大臣(49)、石破茂元幹事長(67)、林芳正官房長官(63)の3人です。

まず、小林前経済安保担当大臣は「世界をリードする戦略産業を育成し、物価高への対策パッケージを今年中に打ち出す」としています。

そして、石破元幹事長は「ルールを守る」「国民を守る」「地方を守る」など、5つの「守る」を柱にしています。

一方、林官房長官は人口減少対策、国土強靱化、外交防衛の「3つの安心」を主張しています。

ホラン千秋キャスター:
自民党のリーダーを決めてから、おそらく総選挙ということになるのだと思いますが、ここで掲げる政策というのは、どれくらい私たちの生活に影響が出てくるものなのでしょうか?

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
「自分はどうも当選しそうにない」という人が、なんとなくスローガンだけ打ち上げている面もありますよね。

たとえば茂木さんは「政策活動費をやめる」と言っていますが、幹事長を3年やるなかで、毎年7億円や8億円をもらっていました。それを一体何に使ったかという説明はしていません。

それから茂木さんは、与野党協議で「政策活動費は廃止できません」と言って押し切っていたわけです。それが急に、今になって「廃止する」というのは、政治家はあまり信頼できないなと思わせる典型的な行動ですよね。

井上貴博キャスター:
政策活動費については大いに議論していただきたいところですが、幹事長時代にできなかったものが、なぜ今「できる」となっているのか本当によくわかりません。

今回の総裁選は、自民党の裏金事件や、裏道を残した法律の部分にどこまで本気で切り込む方がいるのかと思いながら見ています。しかし、やはりお金に汚い政治家が他の改革なんてできっこないと思います。

所属議員の方々には「お金の部分はそっとしておいて」「そこは切り込まないで」という本音があるのでしょうか?

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
一連の、ちょっとした微調整は打ち出しましたが、結局そんなに芯を食ったところにはいっていないわけですよね。ですから本音は、この程度で嵐が過ぎ去るのを待ちたいということです。

井上キャスター:
「公認しない」なんてことはやめてほしいということですね。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
公認問題はおそらく、選挙が近くなればもう1回出てくるでしょうが、最終的にはそう簡単にいかないと思います。

岸田総理就任時の政策発表を振り返ると…

加藤キャスター:
一方、現総理の岸田さんは、4日に山梨で行われた自民党議員の研修会で「これまで進めてきた政策を維持し発展させる候補者が誰かを、しっかり見極めることも重要なポイント」だと話していました。

ではここで、2021年9月に岸田さんが総理になったときの政策発表会見を振り返ってみましょう。中間層の所得を引き上げる「成長と分配の好循環」、さらに「令和版所得倍増」というものを掲げていました。

しかし実際にふたを開けてみると、この3年間で歴史的円安、物価高騰、実質賃金は2024年5月まで26か月連続マイナスという現状になっています。

ホランキャスター:
理想を掲げるのはもちろん素晴らしいことですし、理想を追い求めるのも政治家の仕事だと思います。

ただ、聞こえのいい言葉だけを並べて、実現できるかどうかという可能性みたいなものはあまり重視せずに掲げられてしまうと、そこだけを見るわけにはいきません。

そのあとの総選挙を控えていると考えたとき、一体どれぐらい実現できそうで皆さんがこういう言葉を紡いでいるのか、私たちもしっかりと見なければいけないと思います。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
たとえば岸田さんは3年前に総理になりましたが、今の金融資産課税では、株の売買や配当などで儲けたお金には、2割しか課税がかかりません。

岸田さんはそれをもう少し上げようとしていましたが、株価がガタガタガタっと落ちてしまったものですから、はっきり言って岸田さんはたじろいでいました。そこを自分で深刻に見つめて、どうしてできなかったのか、これからどうすればいいかというのを、少なくとも退陣する前に国民にきちんと説明すべきだと思います。

自分の政策はどこができて、どこができなかったのか。それは自分が努力したけれどもできなかったということを、真摯に打ち明ける必要があります。そうしないと、結局なんか綺麗事を言って去っていくのかなということになってしまいますよね。

井上キャスター:
今回は選択的夫婦別姓がすごくわかりやすいというか、イエス・ノーで濃淡が出てきました。「まだ国民的な議論ができていない」と逃げる人もいますが、「いやいや、議論ができていない、覚悟がないのはあなたたちでしょう」「これだけ経済界も早急にやれと突きつけているのに」と思います。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
経済界も、与党の公明党も言っているので、やろうと思えばお金は1円もかからずにできることです。

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<プロフィール>
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年

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