「先入観が働いて…」心電図などを使わず“死亡”と誤判断
10日、愛知県東浦町のマンションで倒れていた70代の男性を、救急隊員が誤って“死亡”と判断し病院に搬送せず、その後死亡した事案。12日、消防本部が会見を行いました。
【写真を見る】生きていた男性を「死亡している」と誤判断 「先入観が働いて」過去にも同じミス…どう防ぐ?【news23】
半田消防署 小林満 署長
「ご家族の方、傷病者の方、大変なご迷惑をおかけした。重大な事案を起こしてしまったなと認識をしております。あってはならない事案が発生したので、二度とこのようなことが起きないように、訓練を実施し、再発防止に繋げていきたいと思っております」
10日午前9時半ごろ、新聞が4日分ほど溜まっていることに気づいたマンションの管理人からの通報で、救急隊員が現場に駆け付けました。
そのうち2人の救急救命士が、浴室に意識不明の状態で倒れていた70代の男性を、呼吸や反応がないなどの理由で“死亡”と判断、病院に搬送しませんでした。しかし午前11時すぎ、引き継いだ警察官が男性の口元と指先がわずかに動いたのを確認し、再び消防へ通報。
男性は、発見からおよそ1時間半後に病院に搬送されましたが、その日の夕方に死亡しました。
――病院への搬送が遅れたことと男性が死亡したことの因果関係は?
知多中部広域事務組合 中山善朗 消防次長
「現状そういった内容については、医療機関の方に伺うことになると考えますが、警察との話の中で、捜査の関係もあるので現状では答えられない」
国の基準では、死亡の判断において意識レベルや呼吸の有無の確認など6項目のほか、「『明らかに死亡している』という先入観を持たない」、「聴診器・心電計等の器材を活用し、心静止を確認する」とされています。
現場には心電図や聴診器を持参していましたが、今回の傷病者に対しては使わなかったということです。
半田消防署 小林満 署長
「先入観が働いて、そこまでの観察をしなかったと推測している。救急隊の判断に委ねている、ここが一つの大きな問題点」
救急救命士の資格を持ち、救急隊員として勤務していた専門家は「現場判断に委ねられる体制」を疑問視します。
東北福祉大学 福田理絵 助教
「なんとなく、もういいんじゃないのという意識が人の生死を分けるところの判断、そういうところにヒューマンエラーが出てしまったのかなという気がします」
過去にも“誤判断”の事例 再発を防ぐために重要なことは
救急隊員の“誤判断”は、今回に限ったことではありません。2018年には大阪市でも、今回の事案と同様に救急隊員が死亡と誤って判断し、搬送しなかった事案がありました。
人間の生死にかかわる重要な判断において、いかに誤りを防いでいくか。愛知県豊橋市の消防署ではこんな取り組みをしています。
豊橋市中消防署 大澤紀仁 救命指導官
「現場では、聴診器や心電計などで心臓が動いているか、動いていないかを判断します。そこに、ご家族や関係者等に立ち会ってもらい、救急隊と共に納得してもらい不搬送としています」
さらに、現場が先入観を持たないよう、国の基準をもとに作成されたチェックシート。一つでもチェックがつかなければ、必ず病院に搬送するといいます。
大澤 救命指導官
「救急隊は医師とは違うので、搬送・不搬送の判断に迷うときもある。そんな時は、搬送を選択するようになっている」
専門家も現場判断に任せるのではなく、“判断基準を明確にすること”が重要だと指摘します。
東北福祉大学 福田理絵 助教
「10人いて10人の判断が違うとなると、何かの間違いが起こってしまうので、誰が見ても分かるルールを文面に記載するなど、それが再発させないためには重要なのではないかと思います」