女性を違法風俗店に紹介していたなどとして、巨大スカウトグループのリーダーが逮捕されました。“人身取引”とも言われる手口で稼いだ金額は、70億円にのぼるとみられています。
【写真を見る】スカウトグループ「アクセス」の手口“人身取引”
“人身取引”風俗スカウトグループ摘発 ホスト通いの女性狙いか
風俗店で働く女性(20代)
「(稼ぎは)完全にホストに使っていて、12月は400万ぐらい。それをそのままホストにベットみたいな。友達の使っていたスカウト、そこがきっかけでお店に勤め始めた」
裏に潜んでいたのは“風俗スカウト”です。
7日に再逮捕された遠藤和真容疑者(33)は、大分・別府市の違法風俗店で働かせるために、女性を紹介した疑いが持たれています。
この男が主導していたのが、スカウトなど約300人を抱える巨大グループ「アクセス」。その手口は“人身取引”とも言われています。
まず、スカウトがSNS上で女性を勧誘。送らせた自撮り写真などをもとに、全国約350の風俗店から最も高い報酬を提示した店に女性をあっせん。「スカウトバック」=紹介料として稼いだ総額は、70億円にものぼるとみられています。
SNS上には北海道から九州まで津々浦々、風俗店へのあっせん情報が掲載されています。背景にあるのは“悪質ホスト”の問題です。
元スカウトの男性に話を聞くことができました。
スカウトを通じホスト側にも“女性の稼ぎを確認できる”メリットが
――(周りのスカウトが)ホストから依頼を受けて風俗にあっせんしていた?
元スカウト(20代)
「ありましたね 。うちの会社にもいましたね。やり方にもよると思うんですけど、飲み屋でばったり会ったようなシチュエーションにして、『これ仲いいスカウトなんだよね』みたいな。一緒に仲良くなっちゃって、『こっちで働いてみようよ』みたいな」
男性は、ホスト側にとってもスカウトを通じて“女性の稼ぎを確認できる”メリットがある、と話します。
元スカウト(20代)
「稼ぎがいい子たちはホストに通っている子たちや、何らかの理由で『絶対に今月いくら稼がないといけない』という子たちが多い」
実際のやりとりを見せてくれました。
女性
「そのあと即体(=即日体験入店)とかってできる?」
男性
「できるけどあんまりオススメはしないかなあ」
「働きたいかどうかは女性が決める」と話す男性。年収は、多い時で2000万円あったといいます。
元スカウト(20代)
「風俗に関しては(店に)紹介して、その子が働いて、稼ぎのだいたい10~20%がバックとして、その子が働いている限り(スカウトに)入る」
30年ぶりに警視庁・保安課は「特別捜査本部」設置 元スカウト「なくなることはないと思う」
女性客にツケ払い=「売掛金」を稼がせるために、ホストがスカウトに女性を紹介し、ホストにも風俗店から紹介料が支払われるケースもあります。
スカウトを通じて風俗店で働き始めた女性は、ホストのために全国に出稼ぎに行くことも。
風俗店で働く女性(20代)
「東北だと秋田県で、西の方だと香川県や広島県。私が(お金を)使いたいというよりかは、『これくらい持ってきて』『これくらい稼いできて』と。『お前のこと金としか見てないんだよ』『何時に仕事行くの。早く行けよ』みたいな」
「悪質ホスト」の被害者支援に取り組む団体にも、多くの相談が寄せられています。
青母連 田中芳秀 事務局長
「完全に人身売買だと思います。ホスト産業の中にスカウトも完全に入っているという形になってきて、借金を抱えることによって(女性が)性風俗に行かざるを得ない状況を作っている。そこが一番問題だと思います」
捜査を担当する警視庁・保安課は「特別捜査本部」を設置。これは1995年、オウム真理教の銃密造を摘発した事件以来、実に30年ぶりのことです。
ただ、新宿・歌舞伎町で活動していた元スカウトの男性は、こう話します。
――ホストと繋がって悪いことをしているようなスカウトに対してはどういう気持ち?
元スカウト(20代)
「止めては欲しいですね、もちろん。けど、なくなることはないと思う。あの街は稼げる街なので、『何をしようが、どう思われようが稼ぐ』っていう人たちが稼ぐ街」
“オークション形式”で女性風俗店へ スカウトグループ幹部逮捕
小川彩佳キャスター:
稼いだ総額が70億円を超えるとみられる、スカウトグループのリーダーが逮捕されました。
職業安定法ではホストクラブでの飲食代などを返済させるために、性風俗や売春などの仕事を紹介することを禁止しています。
東京大学准教授 斎藤幸平 氏:
端的に(スカウトは)「クズ」だと思います。貧困やネグレクトで自己肯定感が低く若い女性を洗脳・依存症にして食い物にしていく。やっていることはカルトの宗教団体と変わらない。そういった意味でスカウトや“悪質ホスト”は「クズ」だと思います。
広い意味でいうと、マスメディアでもバラエティなどで真面目に頑張っている人もいて、お金も稼げる夢のある仕事のようにホストを肯定的に扱うことがあると思います。そういうものも含めて見直していく必要があるのではないでしょうか。
藤森祥平キャスター:
青少年を守る父母の連絡協議会(青母連)の田中芳秀事務局長は「ホストに行くことで性風俗に流されるスキームが確立されている。性風俗への供給地になっている」といいます。
東京大学准教授 斎藤幸平 氏:
こういう構造は、いろんなところにあると思います。日本だとアイドルの“推し活”とか。ドイツにはこういうのは全然ないんです。そもそも(ホスト)クラブも欧米にはないんです。
なぜこんなことになるのかと考えると、誰かのために自己犠牲もして、特に女性が献身をすることが“美徳”のように扱われる日本の価値観がありますが、それがこういう形になると、良くないものになってしまいます。
華やかな世界を売りにして女性を金儲けのために、モノのように扱っていいという考え方、こういう価値観そのものを見直すきっかけにしていく必要があるのではないでしょうか。
小川キャスター:
女性がなかなか周りに相談できないという、そういった弱みに漬け込む形での悪質性もありますね。
藤森キャスター:
警察庁は、風営法の改正案を1月に開かれる通常国会に提出する方針です。
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<プロフィール>
斎藤幸平さん
東京大学准教授 専門は経済思想 社会思想
著書『人新世の「資本論」』が50万部突破