超人たちが34年ぶりに東京へ!今年9月に東京・国立競技場で開催される陸上の世界一決定戦「世界陸上」。「東京2025世界陸上」開幕を前に、これまで歴史に名を刻んだ伝説のアスリートたちを紹介します。今回は、男子走幅跳のマイク・パウエル(アメリカ、当時27)。今も破られていない世界記録8m95誕生(1991年東京大会)の裏には、走幅跳でオリンピック、世界陸上合わせて6個の金メダルを獲得している絶対王者、カール・ルイスとの死闘がありました。
【写真を見る】34年間破られていない世界記録 走幅跳のマイク・パウエルが「失神しそうになった」 カール・ルイスとの伝説の一戦【1991年世界陸上】
絶対王者だったカール・ルイス
世界陸上東京大会(1991年/平成3年)の走幅跳が行われたのは、ルイスが100mで9秒86の世界新記録を出した5日後でした。走幅跳はルイスが10年間も不敗を誇っていた種目。1回目に8m68と過去の自身の優勝記録を上回って優位に立ったのです。
一方のマイク・パウエルは・・・
打倒ルイスで臨んだパウエルの4回目。それまで鳴りを潜めていたパウエルでしたが、9mに迫る大ジャンプ。喜んだのも束の間、惜しくも赤旗でファウルとなってしまいました。パウエルは踏み切り板についた自分の足跡を確認し、天を仰ぎました。
追い風参考記録でも圧巻!順調に跳ぶカール・ルイス
ルイスの4回目は、追い風2.9mの参考記録でしたが、なんと8m91の大ジャンプ。記録が出た瞬間にルイスもガッツポーズ、場内からは大歓声が起こりました。この時点でルイスの勝利を疑う者はいなかったのです。
パウエル、世紀の大ジャンプで大逆転
ルイスの余韻が残る中、パウエルの5回目。短く息を4回吐き、助走スタート。9m近くの大ジャンプを決め、着地点をすぐに確認。緊張の面持ちで記録が出るのを待つパウエル。なんと記録は8m95の世界新記録。記録が表示された瞬間に驚きの表情を見せたパウエルでした。この大ジャンプ、助走スピードは100m世界記録保持者のルイスとほぼ同じ。さらに跳躍の高さが特徴のパウエルですが、重心(腰付近)の最高到達点は191㎝だったという分析が出ているそうです。ルイスは134㎝で入賞者8人の中で最も低く、2人の跳躍は対照的でした。
勝利の瞬間、喜び大爆発のパウエル
パウエルが本当に喜びを大爆発させたのはルイスの5回目、6回目の跳躍を見届けた後でした。パウエルはその時の心境を「正直にいえばルイスに逆転されると思いながら5・6回目を見ていたんだ。9mを跳ばれるんじゃないかと。勝ったとわかった時、失神しそうになった」と語りました。一方、10年ぶりに敗れたルイスは「私にとってグレートな競技が出来たと思う。もっとグレートな競技をマイクがやってのけたということだ」と勝者を称えました。
【陸上豆知識】Q.追い風は記録に影響する?
よく実況で耳にする「追い風〇m」。追い風の中で競技を行えば、風の力で自分本来の力よりも加速できます。そのため記録の公平性を期すため、短距離や跳躍系の種目では追い風2m/sを超えるコンディションで出した記録は参考記録となり、公認記録として認められません。ちなみに2m/sの風というのは顔に風を感じたり、木の葉が動く程度の風です。
男子走幅跳「この選手に注目!」
【日本人選手】
◆橋岡優輝(26、富士通)8m36
◆城山正太郎(29、ゼンリン)8m40
【外国人選手】
◆ミルティアディス・テントグル(26、ギリシャ)8m60
パリ五輪、男子走幅跳金メダリスト
※東京世界陸上への出場は未確定です。
※名前の後ろは自己ベスト