大阪・関西万博で再び出展 進化した「人間洗濯機」とは【Bizスクエア】

大阪・関西万博の開幕まで3週間余りとなった。大阪での万博は1970年以来55年ぶりとなる。当時、来場者を驚かせたのが「人間洗濯機」。その人間洗濯機が新たに進化して出展されることになった。
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来月開幕 大阪・関西万博 「人間洗濯機」が進化して再び…
1970年に大阪で開催された日本万国博覧会。延べ6400万人以上が来場した。アメリカ館の「月の石」には連日大行列。
日本の展示でひときわ注目されたのは三洋電機の「ウルトラソニックバス」通称「人間洗濯機」。
あれから55年…来月4月開幕する大阪・関西万博に新たに進化した「ミライ人間洗濯機」が出展。
開発しているのはシャワーヘッドや浴槽などを手がける大阪の企業「サイエンス」。細かい泡を発生させるシャワーヘッド「ミラブルシリーズ」は販売数累計160万本の看板商品。
――人間洗濯機が出展されると聞いたが、何で体を洗うのか?
サイエンスホールディングス 青山恭明会長:
サイエンスの根幹技術であるミラブルテクノロジー。言い換えると、超超小さな、微細な泡を使った技術を使って体を綺麗にするということ。泡というのはサイズによって、持っている特性が全く違う。100ミクロン(マイクロメートル)未満の泡は世界共通で、マイクロバブルと呼ぶ。マイクロバブルというのは全部マイナス電荷を持ったバブルが発生する。毛穴の中の皮脂汚れとか有機物は全部プラスの電荷を持っているため、マイナスのマイクロバブルがどんどんくっついていって、マイクロバブルは浮いてくれる泡なのでたくさんくっついて浮力を持って(汚れを)毛穴からどんどん出していく。だから人間洗濯機は胸から上は(シャワーで)噴射状態で綺麗にし、下側はマイクロバブルで汚れを取っていくことで頭の先からずっと足の先まで綺麗にしようということ。
サイエンスが開発中の「ミライ人間洗濯機」は、お風呂に浸かっているだけで、全身を洗浄できるという。浴槽部分と浴槽に取り付けられたシャワーで、汚れを落とす泡が異なる。
浴槽部分はマイナスの電荷を持つマイクロバブルが体の汚れに吸着し、浮力で汚れを水面に浮かび上がらせる。
シャワーから出る泡は、ウルトラファインバブルと呼ばれ、マイナスの電荷を持つ点はマイクロバブルと同じだが、大きさはおよそ20分の1。
頭皮は、この泡を含んだ強めの水流で毛穴の汚れを除去。顔はミスト状の水流でこの泡を吹き付けて、汚れをかきだしながらうるおいを維持、さらに歯の隙間なども洗浄できるという。将来的には、およそ15分で乾燥までできるようになるのを目指している。
進化した「人間洗濯機」 体だけでなく、心も洗う!?
「ミライ人間洗濯機」はカラダを自動で洗うだけではない。ココロも洗うことができるお風呂を目指し、サイエンスは大阪大学と共同で研究開発を進めている。どんな研究が行われているのか、実際にテスト機で体験させてもらった。
大阪大学 産業科学研究所 神吉輝夫准教授:
心拍をとり、そこから自律神経の解析をして、緊張状態にあるのかリラックス状態にあるのかを調べる。
大阪大学・産業科学研究所の神吉准教授は「ミライ人間洗濯機」での入浴時に心拍数や自律神経の状態を解析する研究をしている。
大阪大学 産業科学研究所 神吉輝夫准教授:
心拍は座っている椅子の裏に心電(図)の電極があり、人間っていうのは微弱な電気信号を出している。この心拍から解析をして、今自律神経の交感神経が高いのか、副交感神経が高いのか解析ができる。
――映像が流れているが、この映像は?
大阪大学 産業科学研究所 神吉輝夫准教授:
例えば自律神経が高ぶって興奮状態にあると、AIが判断して、ここにその人それぞれの好みの映像を映し出す。リラックスしてもらう。将来的な話になるが、毎日お風呂にはいっていただくことで、自分自身のパーソナライズされたデータがたくさん蓄積されていきますので、個人専用のAIで判断して、個人専用の映像が映し出されるとかカスタマイズされたものにしていこうというのが今のプロジェクト。さらに、心拍数のデータなどを蓄積することによって、日々の健康管理とともに病気の早期発見につながるシステムを開発しようとしている。
来月4月13日に開幕する大阪・関西万博。55年ぶりに出展される「人間洗濯機」開発への思いとは…
サイエンスホールディングス 青山恭明会長 「人間洗濯機」にかける思いとは!?
サイエンスホールディングス 青山恭明会長:
小学校4年生の時、人間洗濯機っていうものを見て、大阪の下町育ちだが、55年前は自宅にお風呂がある家など、ほとんどなかった時代。風呂に入るのは銭湯へ行くもんだ。そんな時代にあんなカプセルがあって、人が入って、みた瞬間「これから人間、体洗わんようになるんか」もうあのときの衝撃っていうのは、ずっと頭に残っていました。
――1970年の大阪万博とは、どういう体験だったのか。
サイエンスホールディングス 青山恭明会長:
未知の体験というか、もう世の中の風景が僕は変わった。「日本の未来ってどうなるんやろ?」と思った。6年前にまた55年ぶりに時を経て、大阪の地へやってくるとなった瞬間に迷いもなく、6年後の大阪・関西万博に「ミライ人間洗濯機」という70年万博のレガシーとして我々絶対出ると。万博から社会は変わる。前の万博で出たものは全て現代社会で社会実装された。悔しい思いを持っていた。「人間洗濯機だけは、できなかった」と言われ続けてきた。ミラバスに浸かって手にミラブル持って顔・頭・口を洗ったら、お風呂は終わり。現代版の人間洗濯機は既にできている。
――今度の万博に出ないという選択肢はありえなかった?
サイエンスホールディングス 青山恭明会長:
ありえないです。
青山会長が小学校4年生の時に見た「人間洗濯機」。その開発者が「人間洗濯機」に対する思いを語った。
「人間洗濯機」 55年前の開発者の思いとは?
「人間洗濯機」の開発を託された元・三洋電機の山谷英二さん。
元三洋電機 山谷英二氏:
僕があのまま続けてやってたら、ものにしていた。ある日僕の上司のところに電話が入り、「人間洗う機械を作れ」と。とりあえず会長が満足されるような人間洗濯機を作ろうと。
しかし、専属の社員は山谷さんのみだったため事実上、一人で開発をしていたという。
元三洋電機 山谷英二氏:
人間洗濯機が(万博で)故障せずに毎日動いてくれたらいいなレベル。万博そのものが成功するとかしないとか、人間洗濯機がどんな評価を受けるとか、そういう余裕はなかった。
山谷さんは、万博開催後に、人事異動で部署が変わり商品化実現には至らなかったが、現在は「ミライ人間洗濯機」のアドバイザーとして開発に協力している。
来月開幕 大阪・関西万博 最新技術を世界へアピール
――70年万博と同じ気持ちで、今回の万博を迎えられるものか?
サイエンスホールディングス 青山恭明会長:
一番見てもらいたい今の子供や若者。悲しい話だが、今の若者はもう諦めてる方が多い。日本は世界に類を見ない技術大国だと思っている。世界に示す最後のチャンスであり、最後のステージだと思う。
――自信をなくしている日本が自分を再定義する機会になるといい。
サイエンスホールディングス 青山恭明会長:
日本は優秀。それを世界に見せる本当に最大のチャンス。
70年の人間洗濯機は超音波を使った泡だった。今回の泡は、マイクロバブルとウルトラファインバブルどちらも毛穴より小さい。マイクロバブルは泡で汚れを吸着して動かすことができて、ウルトラファインバブルは毛穴の中に入って汚れをかき出すことができるという。だから体を洗わなくても石鹸つけなくてもいい。
70年万博後に実装されたものをみると、当時、無線電話と呼ばれた「ワイヤレステレホン」。「テレビ電話」、会場の中の迷子を探すのにも利用。「電気自動車」が初めてお目見えした。「動く歩道」や「缶コーヒー」もこの頃開発されて、これを機に社会実装された。
――当時話題のものの中で、唯一社会実装されなかったのが「人間洗濯機」だった。
ニッセイ基礎研究所チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
体験したことがないので、万博のイメージがつかない。せっかく今回も万博が日本で行われる。スタートした後の口コミなどの情報発信がすごく大事だと思う。1回体験された先輩方が、「前回と今回ここが違うぞ」とか「今回ここは面白いぞ」という情報発信してもらった方がよいのではないか。
前回も最初は低調だったが、口コミで人気が広がっていった。前回の万博と今回の万博を比べてみる。まずタイトルが違う。今回は「いのち輝く未来社会のデザイン」。70年万博は「人類の進歩と調和」戦後、まだ25年だった。今失われた30年などと言われるが、それよりも短い期間で奇跡の戦後復興を遂げたという時代。時代の熱量とか高揚感がすごかった。自分たちが挑戦してることを世界に見せたい、世界にもっと知ってもらいたい、世界を自分たちも知りたいという熱量が大きかった。
ニッセイ基礎研究所チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
そういう意味では、やはり先輩方がもう一度万博に行って、その熱量を今の若者や子供に…ということが、すごく大事になってくる。
(BS-TBS『Bizスクエア』 3月22日放送より)