「シフトを組んで24時間働く」未完成パビリオンも 大阪・関西万博メタンガス問題で“子供の世界”に分断【報道特集】

4月13日に開幕する大阪・関西万博。直前に爆発の可能性がある濃度のメタンガスが検知されるなど不安が広がっています。
開幕直前のメディア公開日 火災のあったブラジルのパビリオンなどはオープンせず…
開幕まで4日に迫った4月9日(水)。
村瀬健介キャスター
「ここに集まっているのは、日本全国そして世界各国から集まったメディア関係者のみなさんです。私たちもいよいよこれから万博会場の中に入っていきます」
この日、万博会場が報道陣に公開され、約4500人のメディア関係者が集まった。
村瀬キャスター
「このあたりは工事関係のプレハブがずらーっと並んでいましたが、今このように工事もほぼ終わりました。正面には大屋根リングがそびえ立っています」
2024年6月、リングの内側にはクレーンが林立し、工事が進められていたが…。
その代わりにパビリオンが立ち並び、エスカレーターも設置されていた。
村瀬キャスター
「リングの内側に入っていきます。各国のパビリオンが並んでいる形。大きな星条旗がはためいていますね。これがアメリカパビリオン、この横はフィリピンのパビリオン」
150以上の国や地域が参加。各国の文化や歴史など、世界を知ることができるのが万博の醍醐味だ。
その一方、ウクライナの展示ブースや、4月4日に火災が発生したブラジルのパビリオンはオープンしていなかった。
さらに。
「シフトを組んで24時間働く」一部パビリオンは“完成には程遠い”
村瀬キャスター
「こちらに見えてきたのはインドのパビリオンですけれども、御覧のように今もコンクリート作業をしているような状況で、まだ完成には程遠いような状況」
インドパビリオンの担当者
「全力を尽くしています、まだ間に合うと願っています」
(Q開幕日に100%間に合う確信はない?)
インドパビリオンの担当者
「100%間に合います」
(Q24時間働くんですか?)
インドパビリオンの担当者
「既にシフトを組んで24時間働いています。13日までに終わらせる自信はあります」
他のパビリオンでは夜間も昼間とは別の建設業者が働いている実態があるという。
その一人が取材に応じた。
海外パビリオンの建設業者
「(勤務は夜の)8時・9時から4~5時間ぐらいですね」
(Q日付またぐくらいまで?)
海外パビリオンの建設業者
「そうですね。昼の業者が進まないから、量が多いというのもあって、『夜ちょっと来て、この辺やってほしい。あの辺やってほしい』という感じです。1人に24時間働かせてもあかんと思うので」
さらに、指摘されてきたあの問題は。
工事中にメタンガスの爆発事故が発生…対策は十分なのか
実際に客を入れたリハーサル「テストラン」が行われる中、あの問題がまた浮上した。
4月6日、ボンベを背負いマスクをつけた消防隊員がマンホールを開けて換気していた。
爆発の可能性がある濃度のメタンガスが検知されたためだ。
現場はリングの外にあるトイレの周辺。
このトイレでは24年3月、工事中に火花がメタンガスに引火し、爆発する事故が起きた。
爆発の威力を示す実験映像がある。
メタンガスを含んだ空気を貯め、電気火花で着火すると、一瞬でビニールを突き破った。
メタンガスが検知されたトイレの周りでは、いくつものマンホールでフタが開けられ、換気が続けられていた。
村瀬キャスター
「このあたり見ても、火気を使わないように注意するような看板などはない。こちらにキッチンカーがあるが、このように調理器具も並んでいる。これで対策が十分なのかどうか、少し不安になるような状況」
メタンガスが検知された翌日(4月7日)、万博協会の副事務総長はこう強調している。
2025年日本国際博覧会協会 高科 淳 副事務総長
「基本的にメタンは拡散するとまったく危険性はないもので、この地上エリアのメタンはゼロ。直ちにここで何か作業をして、引火するということはないと思っている」
(Qキッチンカーは開幕後もここにあるか)
高科 淳 副事務総長
「基本的には変わりないのではないか」
万博協会はキッチンカーの事業者に対し、電気調理器などを使うよう求めている。
「ガス抜き管」80本以上設置 管の穴にガス検知器を差し込むと・・・
そもそも、会場となっている夢洲は1977年から埋立事業が始まった人工の島だ。
4つの区画のうち、1区と呼ばれるエリアは大阪市の廃棄物処分場として利用されてきた。
爆発事故が起きたトイレがあるエリアだ。
村瀬キャスター
「万博会場の中でもこの区域は地下からメタンガスが発生する区域。そのためにガス抜きのための管が設置されている」
これは報道特集が入手した内部資料だ。
夢洲で発生するガスを調査したもので、これによると1区には「ガス抜き管」が24年12月の時点で80本以上設置されているという。さらに…
村瀬キャスター
「ゲートの外側、入場客が並ぶところにパイプが出ている。入場者と近い位置にメタンガスの対策のためのガス管が出ていることがよくわかる」
同じエリアにあるガス抜き管には、測定用の小さな穴が開いており普段はテープで塞がれている。
元消防士で守口市議の寺本けんた氏がこの穴にガス検知器を差し込むと…。
爆発する可能性がある濃度のメタンガスを検知したという。
内部資料には、24年12月16日に、夢洲の1区で、3トン近くのメタンガスが測定されたと記されている。近年ではやや大きい値だという。
さらに、メタン濃度が10%を超えたガス抜き管の数は、24年夏は8本だったが、12月は14本だった。
「子供のデリケートな世界にまで分断を生む」保護者の訴え
大阪府は、遠足など学校行事の 一環として、子供たちを万博に無料で招待している。
大阪府豊中市に再検討を求める署名を2万7000筆以上集め、提出した保護者らに聞いた。
大阪・豊中市に住む保護者
「爆発濃度のメタンガスの検知がされて、一瞬にして命を脅かすような事態なので、本当にどう考えているの?というのは豊中市に対しても思いますし、校外学習となると、子供も保護者も先生方も断りにくい態勢をどうしてもしいちゃう」
大阪・豊中市に住む保護者
「(校長などから)市から行けと言われてるから行くことにしたという話も聞きました」
大阪・豊中市に住む保護者
「子供たちの中にも『あの子の家庭は行かないと言ってる』、『あの子は行かないと言ってるけど変な子』。子供のデリケートな世界にまでこの分断を生む結果になっているんです。」
こうした訴えに対する市の反応にも不信感を抱いている。
大阪・豊中市に住む保護者
「安全面については結局、万博協会の発表をずっと、『万博協会が安全と言ってるから安全』。それ以上のことはあまり何もおっしゃらない」
大阪・豊中市に住む保護者
「もしそこで事故が起きたときに誰が責任を取るのかというところまで、そこの不信感もないですか?私すごくあるんですけど」
大阪・豊中市に住む保護者
「学校から行くんだったら安全で安心というのが、保護者の中にもあると思うので、そこがすごい問題だなと思います」
「問題ないという保証は何一つない」夢洲は万博に適しているのか
もともと廃棄物処分場としてできた土地。専門家は、施設を建てることを前提に埋め立てられた場所とは “違う特徴”があると話す。
芝浦工業大学(地盤工学) 稲積真哉 教授
「廃棄物を埋め立てる。日々入ってくる廃棄物の品質は、当然異なってくる。あらゆる質の材料が夢洲の中にはランダムに埋まっている。」
「どこでメタンガスがどのくらいの濃度ででているのか定かではない。それを予測するのが非常に難しい。(メタンガスが)拡散するような条件が整っていない、すなわち閉鎖された空間においては、問題ないという保証は何一つない」
だが、万博協会の副会長でもある大阪府の吉村洋文知事は、万博開催に影響は無いという考えを改めて示した。
山本恵里伽キャスター
「夢洲が万博に適しているのかどうか、対策をしなくてもいい土地でやればよかったのではないかという声もあると思うのですが、その点知事はいかがお考えでしょうか?」
大阪府 吉村洋文 知事
「様々な場所の選定というのはあると思います。ただ、メタンガスが出るというのは、実は東京でも埋め立て地でメタンガスが出るところを市民施設・利用施設として使っている。万博だけメタンガスが出るところを使ってはいけないというのは、ちょっと違うんじゃないかと思う」