「タイピングの音がうるさい。めちゃくちゃあります」退職代行が始めた「離職防止」の新サービスとは?【Bizスクエア】

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2025-09-10 07:00
「タイピングの音がうるさい。めちゃくちゃあります」退職代行が始めた「離職防止」の新サービスとは?【Bizスクエア】

本人の代わりに退職を会社に伝えるサービス「モームリ」では、退職者のデータを活用した“企業向け”のビジネスも始めた。自身も離職経験があるという谷本慎二社長(36)の狙いとは?

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9割の企業が「優しく対応してくれる」

東京・品川区にある退職代行サービス「モームリ」を運営する『アルバトロス』のオフィス。ヘッドセットをつけパソコンに向かうスタッフ達から聞こえてきたのは…

「突然のご連絡失礼いたします。私、退職代行モームリの岡部と申します。御社にて勤務されている✕✕様の退職の件で、この度ご連絡いたしました」

依頼者に代わって企業の担当者に退職の意思を伝え、残っている有給休暇の日数や貸与物の返却、退職に必要な書類などを確認。

多いときには1日に「1人で10社以上」電話をかけることもあるという。

『アルバトロス』退職支援事業部・副主任 岡部沙央里さん:
「9割の会社は本当にイメージと違って、優しく丁寧に対応してくれる。『ついに来ましたか』と話す人もいます(笑)」

依頼最多は「4月最初の月曜日」

退職代行の依頼はLINEやメールで24時間受け付けている。

例えば、<営業はもう無理との意思を伝えたが、対策を取って貰えなかった><上司が高圧的で退職の意思を伝えるのが怖い>などというものも。

『アルバトロス』秘書広報部・主任 浜田優花さん:
「お盆明けは1日で190件依頼があった。過去最高は1日267件で、今年4月の最初の月曜日。4月は特に新卒の人がプラスで依頼がある。おそらく4月1日に入社して土日を挟んで行きたくないと」

どんな依頼理由であっても、2万2000円(アルバイトは1万2000円)で退職代行を請け負い、これまでの退職成功率は100%とのこと。

この「モームリ」を2022年に立ち上げたのが谷本慎二社長(36)だ。

東京・渋谷などの繁華街に宣伝トラックを走らせるなど知名度を高める戦略があたり、累計利用者数は4万人を突破した。

『アルバトロス』谷本慎二社長:
「最近は退職代行を知らない人がいないくらいになっているので、ビジネスとしてはありがたいが、やるべきことを頑張ってやろうとしているけど“うまくかみ合わない会社”が非常に多いので何とかしたいと思った」

そこで、2024年12月から新たに開始したのが“企業側に立った”サービスだ。

蓄積データで「退職防止」サービス

モームリで蓄積された「退職理由のデータ」を活用し、職種や従業員の年代に対応した“退職を防ぐアドバイス”をする「MOMURI+(モームリプラス)」。企業向けの講演の依頼も増えているという。

『アルバトロス』谷本社長(講演にて):
「タイピング音がうるさい、ドアを閉める音がうるさい。実際に退職理由としてめちゃくちゃあります。入社前と後で契約や労務内容に乖離、ギャップがある。新卒やZ世代の退職ではこちらの理由が非常に多いです」

さらに最近は、大学から学生向けに「ブラック企業の見分け方講座」の依頼もあるという。

谷本社長:
「労働者も経験し、中間管理職も経験し、社長も経験してるので、僕は多分どの立ち位置の気持ちもわかると思っている。一生懸命やってる企業とか労働者の気持ちはすごくわかるので、そのすれ違い、ミスマッチをなくしていきたい」

どんな理由で退職を?

新たなサービスのベースとなっているのが退職代行「モームリ」で蓄積されたデータだが、どのように活用されているのか?

まずは、「モームリ」の利用者。年代別に見ると20代・30代で8割を超え、中には15歳のアルバイトの高校生や、介護職に従事する83歳もいたという。

「年配の人でも、会社に恩があるからこそ辞めづらいという人がいる」(谷本社長)

また、退職の理由のデータで一番多いのは「会社と労働者のすれ違い」だ。

【モームリ利用者の退職原因】
▼2割⇒会社に非がある場合の退職
▼6割⇒会社と労働者のすれ違いによる退職
▼2割⇒利用者の個人都合による退職

『アルバトロス』谷本慎二社長(36):
「<会社に非がある><すれ違い>での退職が8割。ここは会社がうまくやってコミュニケーションがきちんと取れていれば、離職が防げた層」

【具体的な退職理由】
▼あるはずの退職金がなかった
▼テレワーク可のはずが週5出社を強要された
▼サービス残業が毎日30分あった
▼都内勤務のはずが地方に配属された
▼ベテラン社員ばかりで人間関係に苦労した

――就業時間や条件について、より権利意識も持っているし厳格になっているということなのか。

谷本社長:
「今は売り手市場で働く場所がたくさんあるので、おかしいと思うことがあれば『じゃあ違うところで働いた方がいい』と思う人も増えているのではないか。労働時間や条件などを主張する人も増えていると思うし、上記のような理由が一つでもあれば、それに付随して『やっぱり労務環境が良くないのかな』と転職を考える人は増えるのではないか。1個あれば他にもあるだろうと」

実際に利用者の退職理由を見ても、1つ「ブラックだな」と思う理由があると、それ以外にもたくさん記載されている事例があるという。

「モームリ」で辞めた人多い企業

そして、「辞められる側の企業」にも特徴があるとのこと。

【モームリで辞めた人が多い企業】(8月1日時点)
※すべて従業員1000名以上の大企業
〔1〕人材派遣会社A社:155回
〔2〕コンビニエンスストア:88回
〔3〕人材派遣会社B社:87回
〔4〕人材派遣会社C社:79回
〔5〕運送会社:66回
〔6〕食品製造会社:61回

『アルバトロス』谷本慎二社長(36):
「派遣会社の場合は、やはり派遣先で辞められると単純に売上げが下がってしまう。だから引き止めてしまうということで、辞めづらい⇒退職代行に依頼というのもあるかと思う。コンビニはフランチャイズ店で勤務する人からの依頼がほとんど。オーナーがちょっとクセのある人だったり、労務環境が良くないといったものが散見される」

ちなみに、谷本社長の会社でも退職代行を使って辞めた人がいるという。

谷本社長:
「退職代行を4回使われたことがある。ほとんどが早期退職で、『スピードが速くて追いつけなかった』という人もいて、やはりショックだった。退職代行事業をやっている当社としては、▼即日退職OK、▼言いづらい場合は同僚に言っても退職OKと入社時に伝えている。それでも退職代行を使われてしまったということで、考えさせられるものはあった」

――反省して、会社の雰囲気や制度などを何か変えていこうと。

谷本社長:
「辞めた人に矛先を向けるのは間違っていると思っていて、そこから何か改善していこうと。例えば福利厚生でもっとこういったものがあれば良いのではとか、もっとコミュニケーションをしっかりとればよかったんじゃないかなどと考えるようにしている」

企業側もサポートして「労働環境を良くしたい」

谷本さんは、一般的に昔に比べれば働きやすさという面では良くなっているとしつつも、「時代がさらなる働きやすさを求めている」と話し、企業がそれに合わせていかないと離職問題はなくならないと考えている。

そこで、立ち上げたのが離職率低下に向けたコンサルティング事業「MOMURI+」だ。

【働く人向け】
▼退職情報開示サービス(1社6000円)

⇒例えば2社から内定をもらった人に退職理由などのデータを公開。「逆に退職理由として企業に非がなかったものも含めありのままのデータが見られる」(谷本社長)
▼「ブラック企業の見分け方」講座など
【企業向け】
▼モームリ顧問制度
▼「退職代行を使われない会社づくり」セミナーなど

――ブラック企業の見分け方講座。どういう会社がブラック企業?

『アルバトロス』谷本慎二社長(36):
「色んなポイントがあるが、例えば大学生に向けて言ってるのは『ホームページをちゃんと見ましょう』と。小さい企業なのに、▼社長の写真が前面にいっぱい載っている、▼『世界を良くしていくんだ』などのきらびやかな言葉がある場合は、大体ワンマン社長だったり、パワハラ社長だったりというのにリンクしている」

――企業向けには、「退職代行が使われないような会社作り」と

谷本社長:
“離職率を低下させるための秘訣”を企業に伝えている。例えばZ世代と呼ばれている世代は、業種についてよくわかっていないとか、みなし残業をわかっていないとか。それを理解した上で面接などをしないと、すれ違いが起きてしまうというのを伝えている。事業として退職代行を増やしていきたいというよりは、企業側のサポートもして“労働環境を良くしていきたい”という思いが強い」

(BS-TBS『Bizスクエア』 2025年9月6日放送より)

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