被爆79年を迎えた長崎ですが、追悼式典では、アメリカやイギリスなど日本を除くG7の大使らが出席を見送りました。イスラエルが招かれなかったことが理由ですが、市民は複雑な思いも抱えているようです。
【写真を見る】被爆79年長崎「原爆の日」 欧米の駐日大使らは式典欠席 長崎市長の対応に賛否【Nスタ解説】
なぜイスラエルを招待せず? 長崎市長は「政治的な理由ではなく…」
南波雅俊キャスター:
8月9日、長崎は原爆の日を迎えましたが、平和祈念式典でG7駐日大使が欠席するという事態になりました。
午前10時45分に始まった平和祈念式典には、101の国と地域の代表らが参列しました。長崎市の鈴木市長は、平和宣言の中で「核兵器廃絶に向け大きく舵を切るべき」と話しました。
午前11時2分には犠牲者を悼み、黙とうが捧げられました。
そして今回の焦点が、2023年まで招待をしていたイスラエルを2024年は招待しなかったという点です。これによって、日本を除くG7の6か国(アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、カナダ、イタリア)の駐日大使が式典を欠席するという事態になりました。
これに先立って7月19日、G7の駐日大使らは書簡を長崎市長宛に送りました。「イスラエルを招かないことは“ロシアなどと同列に扱うようなもの”」だと、イスラエルを招待するように呼びかけたのです。
では、政府はどのように反応しているのでしょうか。
林官房長官は、8日「長崎市主催の行事であり、各国外交団から出席者も含めて、政府としてコメントする立場にない」と話しました。長崎市と事務的なやりとりは行ったが、それ以上の詳細は差し控えるとしています。
鈴木市長は、8日に長崎市としては、なぜイスラエルを招待しなかったかということについて「政治的な理由ではなく、平穏かつ厳粛な雰囲気のもとで円滑に式典を実施したいという中で、不測の事態の発生のリスクなど総合的に勘案した」と話しました。
その一方で、広島でも8月6日に平和記念式典が行われました。こちらにはイスラエルが招待されており、広島市の松井市長は平和宣言の中で「ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や、イスラエル・パレスチナ情勢の悪化により、罪もない多くの人々の命や日常生活が奪われています」と指摘しています。
SNS上では、長崎市長の対応に賛否が分かれています。※一部抜粋
<賛成>
「イスラエルを呼ばないとした長崎市の判断は当然」
「平和式典に戦争状態の国の大使を招待する方が道理に合わない」
<反対>
「相手の考えや思いを変えるために長崎は平和運動をしてきたんじゃないのか?」
「どんな状況でも全ての国に招待は出した方が良いのでは」
斎藤幸平さん「G7のやり方はある種のダブルスタンダード」
山内あゆキャスター:
斎藤さんは、この長崎の対応をどう思いますか?
東京大学准教授 斎藤幸平さん:
二つやり方があると思います。
一つは戦争についての悲惨さ、核の悲惨さを考えるうえで、イスラエルも呼ぶ。そして、そうやるのであれば、ロシアも呼ぶ。核の本当の悲惨さ、戦争の悲惨さを『みんなで考える場にする』ということです。
あるいはロシアを呼ばないのであれば、同じような理由から、今回のようにイスラエルを呼ばない。それはやはり一貫していると思います。
なのに今回のG7のやり方は、ある種のダブルスタンダードです。「イスラエルはいいけれど、ロシアはちょっと…」というのは、まさに今、グローバルサウスなどからも批判されている点です。
もう一点指摘しておきたいのは、アメリカという国には、出席する・しないと勝手に判断する権利はありません。やはり原爆を落とした加害者なわけですから、今回の判断に関して、私は非常に残念だと思います。
山内キャスター:
長崎市長は、紛争当事者だからこそ個人的には呼びたい、呼ぶべきではないかと言っていましたが、G7の旗の数などを見ても、やはりパワーがすごくアンバランスですよね。イスラエルに対する方とパレスチナ側との、力の不均衡を感じます。
東京大学准教授 斎藤幸平さん:
ただ、私たち自身がこの問題の難しさについて改めて考える、いいきっかけにはなったと思います。
山内キャスター:
もう少し私も勉強しようという気持ちになりました。
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<プロフィール>
斎藤幸平さん
東京大学 准教授 専門は経済思想・社会思想
著書『人新世の「資本論」』50万部突破