【獣医師コラム】「海鳥を野ネコから助ける。でも野ネコも助ける。」小笠原諸島のプロジェクト『野ネコ引っ越し作戦』に世界から注目集まる

2024-08-17 17:20

海鳥を野ネコから守る

イメージ画像

東京から南へ1000キロメートルの太平洋上にある東京都『小笠原諸島』。

母島の南崎には、昔からオオミズナギドリやカツオドリなどの貴重な海鳥の繁殖地があります。

2005年春、ここで海鳥の死骸が多数見つかり、繁殖地も荒らされました。

そこでセンサーカメラを設置したところ、カツオドリをくわえた茶トラの猫が映っていたのです。野生化した猫が希少種の野鳥を襲うことが問題となったのです。

カツオドリをくわえた茶トラ

その年の6月から地元NPOによる野ネコの捕獲が始まりました。同年6月16日にこの茶トラの3歳のオス猫が捕獲されたのが捕獲第1号で、この成功から本格的に捕獲が始まりました。そして2009年には、消滅寸前まで追い込まれたこの繁殖地が、毎年、ヒナが巣立つところまで回復しました。

亜熱帯に属する小笠原諸島、父島、母島には、もともと猫はいませんでした。年間を通して暖かく夏と冬との気温差が少なく、過ごしやすい気候なので、猫にとっても暮らしやすい環境だったのです。

データ

捕獲した野ネコはどうする?

海鳥の命を救うための野ネコ捕獲でしたが、野ネコも助けなければならない。そこで始まったのが「野ネコ引っ越し作戦」でした。これは捕獲した野ネコを、島外に搬出し、里親を見つけて飼ってもらうというもの。

捕獲された野ネコは、一度も人と接する機会はなく、飛びかかるほど野生化しており、とても人に馴れるものではありませんでした。直ぐにシャーシャーしてイカ耳をする猫たち、そんな野ネコを家庭で馴らすことはできるのか。うまくいく確証はありませんでした

ところが、そこはイエネコ。野ネコと言えども、その壁は数日のうちになくなるのでした。見た目も性格も劇的に変化、懐き、人の温もりに応えるかとようになり、たちまち家族の一員となっていくのでした。猫も幸せになると、表情にあらわれます。

これはイエネコとしての尊厳を取り戻すプロジェクトでもあったのです。

イエネコするための方法とは?

野ネコがイエネコになる、その壁をなくすにはコツがありました。焦らず、少しづつ距離を縮めて迎え入れることでした。そこには3つの大きな変化が見られます。

<野ネコがイエネコへとなる3つの変化>

  • 1.ストレスフリーで、リラックスした姿勢。
  • 2.甘えがみられ、すりすり寄ってくる。
  • 3.社交的となってセルフ遊びする。

これらが見られれば、もう野生に還ることはなく、イエネコとしての尊厳を取り戻し、家族の一員になったと言えます。

野ネコにしてもいつまでもそこにいたいとは思っていないでしょう。

野ネコが幸せになっていく

最初は食事も排泄も警戒していても、やがて人を信頼し、人に守られていることを知って安堵します。

やがてへそ天したりゴロゴロと甘える姿からジャングルで生き延びていたとは思えないほどに変化していきます。態度や表情もおだやかになります。

まとめ

イメージ画像

活動を始めて19年、2024年4月までに、父島、母島両島合わせて1197匹の野ネコが捕獲されました。

そして船の運航に合わせて、すべて動物病院を介して新しい家族にもらわれていきました。

こうした人道的な活動は、外来種対策として世界からも注目されています。

なにより、イエネコは、飼い主とコミュニケーションをとりたがっており、それができることがイエネコの幸せなのだと教えてもらったのでした。そして長生きすれば猫も幸せです。

この活動はまだ継続されています。

関連記事

『喧嘩の絶えない2匹の猫』が…嘘のように『きっぱりと止んだ』優しすぎる理由に「賢い猫達」「可愛い条約w」と反響続々
猫が心を許した人にだけする仕草5つ
猫が寂しかった時にする5つのサイン
猫が飼い主を舐めてくる時の理由とその気持ち
猫に『酔っぱらった夫婦』がウザ絡みした結果…『面白すぎる対応』に爆笑の声「殺し屋の目つきww」「顔w」と14万5000再生

  1. 大間漁協のマグロ漁船転覆 船長の遺体見つかる 19年初競りで史上最高値3億円超の一番マグロを釣り上げ
  2. ドイツのクリスマスマーケットの車突入、死者5人に けが人は200人以上
  3. 魔裟斗さん・矢沢心さん サンタクロース姿でケーキ配る
  4. 茨城・下妻でキャベツ泥棒か 兄弟を逮捕 県内で被害相次ぎ関連捜査
  5. 「ビールと紹興酒を飲んだ」 輸入中古車販売店の社長をひき逃げの疑いで逮捕 自転車の男性(61)は死亡 警視庁
  6. 都議ら約10人が100万円以上不記載か 都議会最大会派「都議会自民党」で収支報告書に不記載疑い
  7. 【中川翔子】 「猫111頭を助けて」 緊急動画で呼びかけ 多頭飼育崩壊現場からの猫たちを救うため「里親さん・一時預かりさん・レスキュー・ボランティア・物資支援」を募集
  8. 「問題の重大性を世界へ」元ジャニーズJr.がアメリカで訴えを起こした理由を告白 原告の弁護士は460億円の賠償金請求について「2人が提案したわけではない」【news23】
  9. 性被害訴える女性検事が語った苦悩「気持ちも身体も完全に凍りついた」 大阪地検・元検事正の被告が一転、無罪主張【報道特集】
  10. JR成田線が運転再開 倒木の影響で一時運転見合わせ
  11. フーシ派のミサイル迎撃失敗 イスラエル・テルアビブで16人けが
  12. 「同居人を刺した」と通報、女(35)を緊急逮捕 同居人の男性(41)を殺害した疑い 沖縄・宮古島市
×